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受刑者と遺族対面 池袋暴走 「彼の言葉を再発防止に」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2019年の東京・池袋の乗用車暴走事故で、妻真菜さん=当時(31)=と長女莉子ちゃん=同(3)=を亡くした松永拓也さん(37)が29日、関東地方の刑務所を訪れ、旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三受刑者(92)と面会した。面会で飯塚受刑者が高齢者の免許返納の必要性について語ったと明らかにし「複雑な気持ちだったが、できる範囲で答えてくれた。彼の言葉を再発防止に生かしたい」と話した。
 松永さんによると、服役中の飯塚受刑者に会うのは初めて。面会は45~50分で、車いすで現れた飯塚受刑者に「許せる日が来るかは分からないが、あなたを認めることはできるかもしれない。会ってくれたことは感謝している」と伝えた。
 再発防止のため、世の中の高齢者やその家族に伝えたいことがあるかと問うと「早く免許を返すよう伝えてください」と話したという。出所後に対談したいとの求めには肯定的な反応を示した。面会に同席した真菜さんの父上原義教さん(66)=沖縄県浦添市=が「真菜と莉子のことを忘れないで」と伝えると、涙ぐむような様子もあった。
 松永さんは「面会は、私にとって事故の集大成。彼を糾弾するのではなく、彼の言葉をヒントにして同じような加害者、被害者、遺族を生まないために一人一人に何ができるのか考えてほしい」と呼びかけた。また「自分は他人のことを考える人間ではなかったがそういうふうにしてくれたのは真菜だ。家族や見ず知らずの人に対しても愛にあふれていた彼女が自分の道しるべだ」と語った。
 松永さんは遺族の心情を刑務所職員が聞き取って受刑者に伝える法務省の「被害者等心情聴取・伝達制度」を使い、3月に面会希望などの思いを職員に伝えていた。