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【識者】関東での継承伝える一級資料 戦前の芸能資料、琉大に寄贈 鈴木耕太氏(県立芸大准教授)


【識者】関東での継承伝える一級資料 戦前の芸能資料、琉大に寄贈 鈴木耕太氏(県立芸大准教授) 鈴木耕太さん
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 禮子氏の師匠である渡嘉敷守良氏は、尚泰王の冊封である通称「寅の御冠船」に出演した旧士族からその芸を学んだ。それゆえ「冠船流」の名を冠して禮子氏へ師範免許を授与している。本資料群の価値は、渡嘉敷氏の古典芸能の理論が記された「免許証」だけではない。

 戦後、渡嘉敷氏の弟子たちを中心に、川崎(神奈川県)や東京で琉球芸能保存会が発足した。沖縄の戦禍、惨状を聞き知った県出身者たちは、関東の地で琉球古典芸能を保存、継承、上演してきた。

 この活動から、1954年には「沖縄芸能」が神奈川県の無形文化財に指定された。神奈川県の指定は、そのまま琉球政府の文化財指定へ引き継がれる。戦後の川田松夫氏、禮子氏の活動は、この神奈川県の無形文化財指定と無関係ではない。その意味でも機関誌「花かんざし」を含む本資料群は、戦後における琉球古典芸能の一級資料といって良いだろう。

 終戦直後から、琉球政府の無形文化財指定まで約20年の時間がある。この時期の関東における琉球古典芸能の活動を知るためには、貴重な資料であるといえよう。 (談、琉球文学)