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教員不足「限界に近い」 病休返上し出勤、専門教科外の授業も常態化<1票への思い 暮らしの現場から 沖縄県議選2024>4


教員不足「限界に近い」 病休返上し出勤、専門教科外の授業も常態化<1票への思い 暮らしの現場から 沖縄県議選2024>4 街頭活動で学校現場の働き方改革を訴える教員ら=5月、那覇市内
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2023年のある学期末、本島南部の中学校に勤める50代の男性教諭は、同僚の女性教諭が優れない表情で業務に取り組む姿を見て思わず声をかけた。「病休中じゃないの? 無理して働く必要ないよ」。女性教諭は休職中だったが、後任が配置されず、生徒の成績を付ける業務が引き継げなかった。「ほかの先生も大変だから、自分がやらないと」。体調の悪さを押して出勤し、責任感だけで作業をやり遂げた。

 学校では近年、教員不足の影響から、休職者が出ても代替人員がすぐに補充されない状態が続く。県内公立学校では、23年度4月時点で23人の教員未配置があり、24年1月には137人に増えた。24年4月は新規採用増や定年延長などの効果で未配置は12人に減ったが、年度途中の産育休や病休、中途退職もあるため、未配置は年度後半に増える傾向にある。

 教員不足のしわ寄せはほかの教員に向かう。中学校では同じ教科の教員が休職者の授業を分担してしのいでいる。それでもまかなえず、「免許外」という形で県教育委員会に申請し、専門教科以外の授業を受け持つのが常態化している。「理科の先生が数学を教えるとか、英語の先生が国語を教えるというのはざら」という。

 「どこの学校も人員不足で補充要員を探しているから、簡単には見つからない。休職者の穴埋めで負担が重なった教員が体調を崩し、休むこともある。異常事態であり、現場はもう限界に近い」

 政治家には、教員がもっと子どもに向き合える体制を整えてほしいと願う。「働き方改革についても、小手先の対応ではなく、業務を大胆に削減する必要がある」と訴えた。

 本島中部の学校で特別支援教育を担当する40代の男性教諭は、障がい児のクラスではトイレにも行けないときがあると明かす。「障がいのある子は少しの時間でも先生がいなくなると不安になり、パニックを起こすこともあり、休み時間も目が離せない。給食は1分以内で食べるという教員もいる」と現状を説明した。

 教員が余裕を持って働ける環境や、教員と支援員などの配置が十分にあることが理想だとし、「人に予算を充ててほしい。教職員の絶対数を増やすことが大事だ」と要望する。

 自身も子どもたちを育てる教員の仕事に魅力を感じ、採用試験に挑戦し続けて本採用となったのは30歳過ぎだった。「生徒を一番に考えたいが余裕がない。政治家には、教員がブラックと言われないような環境づくりについて、真剣にアイデアを出してほしい」。心から願っている。

(外間愛也)