観光客や地元住民が憩うビーチや海岸が続く西海岸の人気エリア北谷町の北前区。自治会長の徳田伝さん(69)は、2年前に実施された有機フッ素化合物(PFAS)の血中濃度検査を受けた。「結構高い値だった」。北谷町で検査を受けた66%(59人中39人)が、米国の学術機関が示した健康対策を要する目安値を超える結果だった。
発がん性が指摘されるPFASが米軍基地の周辺の地下水などから高い値で検出され、実態を把握しようと、市民団体「PFAS汚染から市民の生命を守る連絡会」が実施した調査だった。
徳田さんは普段、市販の飲料水を飲んでいる。血中濃度が高かったのはおそらく日常的に調理に水道水を使っているからではないか―。「調理も全て市販の水に変えるのは難しい。住民は不安やリスクをずっと抱えながら生活している」
国内には水質の暫定指針値はあるが、公的な規制ができておらず、政府の対応は遅いと感じている。「本来なら住民の実態調査は政府の責任でやるべき仕事であり、一地域だけの問題でもない」
先日、岡山・吉備中央町が国内で初めて汚染地域の住民の血液検査を公費で実施することが報じられ、今後の県内の動向にも注目する。
県内では、米軍嘉手納基地や普天間飛行場からPFASを含む泡消火剤が流出したことを機に、県や基地周辺市町村、住民らが基地内での汚染源調査を求めてきたが実現に至っていない。
北谷浄水場の取水源となっている中部河川からPFASが高い値で検出され、県企業局が高機能粒状活性炭で除去対策をしている。水道料金値上げの一因にもなり、負担が県民に重くのしかかる。
他県でもPFAS汚染が次々と明らかになり、全国的な問題として取り上げられるようになった。この動きに期待し、来たる県議選に託す思いは強い。「この問題を知る議員が当選して政治の場に反映させていってほしい。行政や政府に圧力をかけて動かす力となってほしい」
選挙の重要争点に押し上げようと、立候補者に対してアンケート調査を実施する試みもあった。全員に行き渡らせることができなかったが、汚染問題に対し回答者のほとんどが「不安に思う」と感じていた。宜野湾ちゅら水会の照屋正史さん(68)は「回答した人は何らかの対策が必要だと思っている。当選したら積極的に取り組んでほしい」と要望した。
PFAS汚染は全ての県民生活に関わる「命の水」の問題。国や米軍の対応が進まない中で、住民の意思を示す県議選の投票日を迎える。(石井恭子、慶田城七瀬)
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