【糸満】99年の歴史がある「医療法人仁清会かみや母と子のクリニック」の産科が、12日退院患者をもって分娩(ぶんべん)対応を終了した。1997年6に現在の糸満市阿波根に移転開業し、27年間で1万6214人の分娩が行われた。産院を退院する最後の母子は親泊珠那(じゅんな)さん(26)と6日に生まれた珠采(みと)ちゃん。珠那さんは「初めての子どもで心配もあったが、先生方や助産師さんがサポートしてくれ、とてもいい場所だった。まずは健康で元気に育ってくれれば」とわが子を抱えながら話した。
神谷仁院長(65)は「(1985年から)産科医になり39年目、当たり前の日々だったがずっと緊張しているのは体力的に厳しかった。お産以外は今まで通りなので今後ともよろしくお願いします」と話した。今後は32週までの妊婦健診は継続しつつ、訪問看護や産後ケアなどに力を入れていく。
同クリニックは開院から親子3代で受け継がれ、字糸満で開業した。当初産科医は県内に3人ほどしかおらず、助産師が主流だった。緊急時にはリアカーで患者が運ばれて来たり、院長が馬で往診したりしたという。市阿波根に移転してからも市内数少ない産科として、親子3代でお世話になった家族や与論島や久米島などの離島から1カ月間泊まって出産を迎える人もいた。
6月に出産を控える幸地望さん(35)=糸満市=は「かみやで出産できなくなると知ってショックだった。近くで産みたいと1人目をかみやで産んで、母乳外来でもお世話になったので、できればかみやで産みたかった」と話した。
同クリニック看護師の金城智恵美さん(59)は「先生の体力的にも無理はできないと思ったが『やりたいことをやっていいよ』と言われ今後は産後ケアに力を入れることになった。地域で困っている皆さんのために切れ目のないケアができれば」とこれからの思いを語った。
(川嵜紋通信員)