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「僕だからこそ」ALS患者、訪問看護立ち上げ目指す 寄付呼びかけ 糸満 沖縄


「僕だからこそ」ALS患者、訪問看護立ち上げ目指す 寄付呼びかけ 糸満 沖縄 訪問看護ステーションの開業を目指すALS患者の眞榮田純義さん(右)と佐川かんなさん=6日、南風原町
この記事を書いた人 Avatar photo 小浜 早紀子

 体を徐々に動かせなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」と27歳で診断された糸満市出身の眞榮田純義さん(29)が、幼なじみと訪問看護ステーションの開業に向け奮闘している。要支援者となった今を見つめ、「僕だからこそできる事業」と立ち上げを決意した。利用者と家族の時間に寄り添うサービスを目指す。

 ALSは、運動神経が障害を受けることで、全身の筋肉が少しずつ衰える進行性の難病。厚生労働省によると2022年度末現在、ALSの特定医療費受給者証所持者は全国で9765人(30歳未満は15人)。うち県内は95人となっている。

 「腱鞘(けんしょう)炎かな」。眞榮田さんが利き手である右手の親指に違和感を覚えたのは21年頃。当時、ホテルの従業員だった。コロナ禍もあり、病院の受診をためらう間に箸を握れなくなったり、何もない場所で転んだりと異変は少しずつ大きくなっていった。

 翌22年4月、ALSの診断とともに、平均3~5年の余命を宣告された。27歳だった。同席した家族とパートナーは落ち込んでいたと冷静に振り返る眞榮田さん。その日の夜、率直に思いを伝えた。「クヨクヨしても時間がもったいない。楽しい思い出をつくろう」

 当初は、家族の負担をきらい、人工呼吸器の装着を選ばないと決めた。しかし、同じALS患者で、発信活動をする武藤将胤(まさたね)さんとの交流を機に心境が変化。将来必ず待ち受ける24時間看護・介護の負担を減らす仕組みづくりを、当事者目線で行いたいと考えたという。

 訪問看護ステーションは糸満市武富を拠点に、10月開業を目指す。幼なじみで看護師の佐川かんなさん(29)とともに、2月には新会社を設立した。難病患者と医療的ケア児の訪問看護のほか、訪問介護や相談窓口の展開を予定する。

 眞榮田さんは現在、車いす生活を送り、講演会の開催のほか、難病患者や医療関係者らとの情報交換に奔走する日々だ。

 元来、悩むことがないと話し、診断からの約2年間を笑顔でこう振り返る。「健常の時には見えなかった世界が見えて、人の温かさを感じる。今の方が幸せです」

 同ステーションの資金造成に向け、ウェブサイト「レディーフォー」でクラウドファンディングを実施している。第一目標額を10日に達成、第二目標額は750万円。14日午後11時まで。サイトは(https://readyfor.jp/projects/ALS27)。

(小浜早紀子)