1億5000万円を匿名で那覇高の同窓会に寄付 贈り主は戦時下の卒業生 沖縄戦で動員された学友思い


1億5000万円を匿名で那覇高の同窓会に寄付 贈り主は戦時下の卒業生 沖縄戦で動員された学友思い 城岳同窓会に匿名で1億5千万円を寄付していた新垣泰一さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 那覇高校の生徒を支える奨学金の原資1億5千万円を匿名で寄付した卒業生の氏名が5月25日、旧県立二中・那覇高の同窓生でつくる城岳同窓会(宮里博史会長)の総会で初めて明かされた。同窓会への寄付者は二中の32期生で、1945年卒業の故・新垣泰一さん(享年95)。2023年10月に死去した。沖縄戦で鉄血勤皇隊に動員された学友をおもんぱかり、匿名で巨額を贈った。

 新垣さんは1928年、那覇市久米生まれ。二中卒業後、食糧庁で働きながら早稲田大学第二政治経済学部(夜間)に進学した。フィルター製造会社を経て、工業用フィルター最大手の日本ドナルドソンに入社し、78年、50歳で社長に就いた。88年に沖縄に帰った。

 「私は苦学したが、後輩たちは金銭面で苦労せず勉学に励んでほしい」。新垣さんは2007年、同窓会に申し出て1億円を託した。同窓会は08年に「A氏奨学金制度」を創設し、県外に進学する卒業生2人に年60万円、県内の大学に進む1人に年36万円を給付してきた。

 さらに新垣氏は17年、「国際的視野を持つ人材育成に役立ててほしい」として新たに5千万円を託した。同窓会は、春休みの「海外短期留学制度」を創設し、毎年2人の1年生を米ハワイ州の高校に3週間派遣している。

 生徒の経済事情を軸に選考される奨学金により、これまで46人の進学を支え、海外短期留学に7人を派遣した。

 同窓会の与儀幸英事務局長によると、新垣さんは疎開する子どもたちを乗せた「対馬丸」に乗り遅れ、九死に一生を得た。後続の軍艦に頼み込んで乗船し、対馬丸を撃沈した米潜水艦の魚雷の航跡を目撃したという。鉄血勤皇隊に動員された同級生らの苦難に忍びがたい思いも抱き、「自分が目立つことはしたくない」と名を伏せた。

 宮里会長は「新垣さんとご遺族の厚意に深く感謝したい。今後も人材育成に有効に活用したい」と語った。

 (松元剛)