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いかに平和を伝えるか 対馬丸記念会 記念館の役割議論 沖縄


いかに平和を伝えるか 対馬丸記念会 記念館の役割議論 沖縄 シンポジウムで登壇者の意見に耳を傾ける来場者=1日午後、那覇市の県立博物館・美術館
この記事を書いた人 Avatar photo 外間 愛也

 対馬丸記念会が1日、県立博物館・美術館で開催したシンポジウムには、対馬丸事件の遺族や対馬丸記念館の関係者らが登壇した。事件の記憶を後世につなぐことの意義や平和を発信する資料館や博物館の役割、また教育現場で戦争や平和を教えていくためにどのような工夫が必要かなど多彩な意見があった。

 事件で姉2人を亡くした記念会の外間邦子常務理事は、母親が毎日姉の仏壇に手を合わす姿を見て育った。「子どもたちが命を大事にし、夢と希望に向かって歩むこと。そのバトンを渡す場所が対馬丸記念館だ」と涙ぐみながら語った。

 兄2人を事件で失った記念会の渡口眞常副代表理事は記念館の運営状況を解説した。「今後、船体の一部でも引き上げるとか、船の構造を3Dデータで視覚化するなどできないかと考えている」と述べた。

 義理の祖母が事件の生存者だった真和志小学校の眞榮城善之介教諭は、戦争体験者が減少する中で、戦争や平和を伝える役割が学校現場に求められていると説明。「時代に合った地域教材を開発し、戦争の恐ろしさだけでなく、命の尊厳などを伝えていくことが必要だ」と強調した。

 校区に対馬丸記念館があり、館の活動に協力してきた上山中元校長の前田比呂也さんは「学校で慰霊の日などの特設授業を実施することが年々難しくなっている。沖縄戦だけでなく、いかに平和を考えさせていくかが大切だ」と訴えた。

 ひめゆり平和祈念資料館の普天間朝佳館長は平和を発信する民営の資料館や博物館の存在意義を強調。「政治や人事異動に左右されないため、展示内容や学芸員などスタッフの継続性が保てる。収入確保や人材育成などの問題をどうクリアするかはひめゆりでも共通の課題だ」と述べた。
 琉球新報社の島袋貞治暮らし報道グループ副グループ長も登壇し、報道機関の立場から対馬丸事件や戦争、平和を伝えていく意義を語った。
 (外間愛也)