アスベスト(石綿)が原因で発症し、余命は平均2年とされる中皮腫を患いながら、浦添市の鹿川(かがわ)真弓さん(46)は発症からの20年間、手術と治療を重ねて保育士として働く。鹿川さんは13日、那覇市泉崎の県立図書館で開かれる中皮腫啓発月間沖縄セミナーで登壇し、闘病体験について話す。
中皮腫は、内臓を覆う膜の細胞から発生する悪性腫瘍。アスベストを吸い込んでから発症までの潜伏期間は最低10年、通常は30~40年とされる。
鹿川さんは石垣市の出身。アスベストを吸う環境にいた記憶はない。幼い頃に面倒をみてくれた祖母が建築現場で手伝いをしていたと聞いた。服に付着したアスベストも病因になり得るが、影響したのかは不明だ。
保育士をしていた26歳のとき、腹膜中皮腫と診断された。国立がんセンターで緩和ケアを勧められたが、あきらめなかった。抗がん剤治療を始め、3年後に両側横隔膜や卵巣などを切除した。
快方に向かい、復職した。しかし、2016年に胸膜中皮腫が再発。再手術で命を取り留めた。重い副作用がある治療を今も毎月続けるが、また保育所で働けることがうれしい。鹿川さんの20年の歩みが、ほかの患者の希望にもなっている。
鹿川さんは、患者らが集う中皮腫サポートキャラバン隊に参加し、オンラインで交流している。「体験談を聞くと気持ちが楽になる。一人で悩まないで」と呼びかける。
13日のセミナーは、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会などが主催し、午後1~4時に開かれる。治療の最新情報を専門家が話し、社会保障など支援の説明、鹿川さんの講演が行われる。
また、アスベスト健康被害の相談会を同じ会場で同日午前9時~正午に開く。電話相談も受け付ける。電話番号は0120(117)554。
(宮沢之祐)