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守る“島の原風景” 「琉球瓦」技術保持者に八幡昇さん 生家の手作業、次代へ 文化財修復にも一役 


守る“島の原風景” 「琉球瓦」技術保持者に八幡昇さん 生家の手作業、次代へ 文化財修復にも一役  琉球瓦の製作研修で受講生に指導する八幡昇さん(写真奥)=2021年7月29日、与那原町の八幡瓦工場
この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 文化財の保存のために欠かせない伝統的な技術や技能を保護する「選定保存技術」には、「屋根瓦製作(琉球瓦)」と「屋根瓦葺(琉球瓦葺)」が選定され、保持者に八幡瓦工場社長の八幡昇さん(74)=与那原町、保存団体に琉球瓦葺技術保存会が認定されることが決まった。沖縄から保持者に認定されるのは2008年の手機製作の大城義政さんに続き2人目。保存団体としては02年の琉球藍製造技術保存会に続き2団体目となる。琉球瓦製作としての認定は今回が初めて。

 選定保存技術の保持者に認定される八幡昇さんは、瓦工場を営む家に生まれ、幼少期から家業を手伝いながら技術を習得した。1975年に八幡瓦工場に入社。91年に工場を継ぎ、琉球瓦一筋に歩んできた。

 手作業の工程では、赤土とクチャ(泥岩)をこねた材料を扇状にして木製の型に巻き付けて成形する。乾燥後に手で4等分や2等分に割り、摂氏約1千度で焼く。

 焼き上がった赤色の瓦は、青空に映え沖縄らしい景観をつくる。国指定重要文化財「中村家」(北中城村)など伝統的家屋の修復に琉球瓦は欠かせない。

 一方、近年瓦ぶきの建物は減少していることに加え、機械化の影響もあって技術は途絶えつつある。「いずれ技術の継承や保存が必要になる」との思いから道具を保存していた。

 2020年から、沖縄美ら島財団が取り組む琉球瓦の製造研修の講師として人材育成や指導に力を注ぐ。受講者も瓦を作れるようになってきた。今回の認定に「ありがたいことだ。注目されて後輩の刺激になってくれればうれしい」と喜びをかみしめた。

(慶田城七瀬)