新垣幸子さん、人間国宝に　八重山上布、括染の復活に尽力　「琉球瓦」「琉球瓦葺」は国選定保存技術に　文化審議会が答申

　国の文化審議会は19日、県指定無形文化財の「八重山上布」を国の重要無形文化財に指定し、八重山上布保存会代表で染織家の新垣幸子氏（78）を保持者（各個認定）＝人間国宝＝に認定するよう盛山正仁文部科学相に答申した。新垣氏が認定されると県内の人間国宝は11人、故人を含めると18人となる。工芸技術分野での人間国宝は「首里の織物」で認定された祝嶺恭子氏に続き、2年連続。人間国宝の内訳は工芸技術分野で7人、芸能分野で11人。

　文化審議会はさらに「屋根瓦製作（琉球瓦）」と「屋根瓦葺（琉球瓦葺）」を国選定保存技術に選定し、赤瓦職人の八幡昇氏を屋根瓦製作の保持者に、琉球瓦葺技術保存会を保存団体として認定するよう答申した。

　八重山上布は石垣島などで栽培される苧麻（ちょま）を原材料に、紅露（クール）やフクギ、藍などの植物を染料に草木染めによって織り上げられる麻織物で、括染（くくりぞめ）と呼ばれる伝統的な染色技法が用いられている。歴史は古く、琉球王国時代には人頭税の上納品として首里王府に収められていた。

　人頭税が廃止されて以降、伝統技法は一度途絶えたが、新垣氏は文献などを基に、独自で調査研究し、括染の技法を復活させた。

　文化審議会は新垣氏について「伝統的な八重山上布の技法を高度に体得し、卓越した技量を持つ染織作家として活躍している。作品においては八重山上布の技術を基に、多様な植物染料を生かした透明感あふれる色彩で、括染ならではの自由で伸びやかな絣模様が展開し、その芸術性に対して高い評価を得ている。また、後進の育成にも尽力している」と答申した。

　八重山上布については「芸術上特に価値が高く、工芸史上特に重要な位置を占め、かつ地方的特色が顕著な染織技法である」と評価した。　

（吉田健一）