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大麻由来「CBD」を含む薬品、法改正で医療利用可能になった一方で…患者に危機感も 沖縄


大麻由来「CBD」を含む薬品、法改正で医療利用可能になった一方で…患者に危機感も 沖縄 渡久山愛さんが使うCBDオイル。てんかんの発作を抑え、命をつなぐ役割を果たす。
この記事を書いた人 Avatar photo 宮沢 之祐

 海外で難治性てんかんなどに処方されてきた大麻草由来のカンナビジオール(CBD)を含む薬品が日本の医療現場でも使えるようになる。2023年12月に大麻取締法などの改正法が成立し、10月にも施行される。画期的な方針転換と歓迎される一方、これまで市販されてきたサプリメントなどのCBD製品が麻薬として取り締まりの対象になり、利用してきたてんかんやがんの患者から不安の声が県内からも上がっている。

 大麻取締法は、大麻から作った医薬品の使用を禁じてきた。そのため米国で薬事承認されたてんかん治療薬が日本で使えず、専門医や患者会が早期承認を求めていた。CBDに陶酔性や衝動性の副作用はなく、このてんかん治療薬も乱用にはつながらない。

 一方、医薬品に比べて濃度の低いCBDオイルなどは既に「食品」として流通している。同法が流通を禁じていない大麻草の実や茎を原料とし、不眠や体調管理に効果があるとされる。中には、医療効果によって命をつなぐ人もいる。

命の綱

 浦添市の女性(45)は1年前、乳がんが分かった。抗がん剤による痛みや吐き気に苦しんだが、CBD製品を使うと治まった。主治医に相談すると、海外の論文を読み、使用を認めてくれた。CBDを使いながら化学療法を続けている。

 先天性の重い障がいがある北中城村の児童(7)は、てんかんの発作を抑えるためにCBDオイルを使っている。生後すぐ入院し、両親は医師に「3歳まで生きられないかもしれない」と告げられた。

 CBDが難治性てんかんに効果があるという海外の事例を知った両親がオイルを使い始めた。発作が治まり、一時は17種類服用していた薬を徐々に減らし、断薬できた。

 だが、現在使っているCBD製品が法改正で「麻薬」扱いになる。

有害成分THC

 大麻草は、陶酔作用がある有害成分テトラヒドロカンナビノール(THC)を含有し、CBDにもごく微量残留する。その残留濃度が取り締まりの新たな基準に。厚生労働省はオイルの場合、10ppm以下とする。

 だが、この低い数値での製造は難しく、利用者は「事実上の販売禁止」と危機感を募らせる。

 これまでのCBD製品に問題はあったのか。

 県薬務生活衛生課によると、CBDと称して販売されたサプリメントを摂取し、意識障害に陥るなどトラブルが頻発したが、実際は危険ドラッグの合成カンナビノイドだったとみられるという。

混乱の恐れ

 難治性てんかん患者にとって、発作を抑えるCBD製品は文字通り命綱だ。厚生労働省も「難治性のてんかん患者のCBD使用は阻害しない」とし、特定臨床研究の対象とすることを示唆する。だが、患者に合った製品をそのまま使えるのか、具体策は示していない。

 厚労省はがん患者らへの対応を考慮していない。CBDに頼る人の数さえはっきりせず、使用禁止は混乱をもたらしかねない。医療大麻の活用を啓発してきた正高佑志医師は「CBDは安全性の高いサプリメントで、一般のアクセスは保たれるべきだ」と強調する。

 沖縄でのてんかん医療を先導してきた医師、饒波正博さんは「CBDを含む薬品で恩恵を受ける患者は多い」と評価。CBD製品を使う患者については「使えなくなると影響は大きい」とし、CBDを医療ベースで扱えるように医師らへの啓発の必要性を指摘した。

 (宮沢之祐)