深刻な子どもの貧困問題に対応するため、2016年に宜野湾市内に開所した子どもの居場所「普天間やまがっこう」。運営する當山洋子代表が関わってきた子どもの中には、親からネグレクト(育児放棄)気味に扱われている子や、暴力を振るわれている子もいた。
當山代表は「勉強しなさい」「学校に行きなさい」などと口やかましく指示することなく、自然体で子どもに寄り添う。企業などから寄付してもらった菓子や果物を子どもたちに食べさせ、時には近場の公園やビーチに連れて行って一緒に思い切り遊ぶ。
家族と連絡を取りつつ、信頼関係を築いた子どもには社会の厳しさについても説明する。當山代表に諭され、中学時代不登校だったが通信制高校に進学し、卒業した生徒もいる。
沖縄県の子どもの貧困率(世帯所得が全国中央値の半分にも満たない世帯の割合)は2015年の調査時点で29・9%だった。県民所得は全国最下位が続き、母子世帯の割合は全国で最も高い。
市子ども未来応援計画(19年発表)によると、宜野湾市の困窮層の割合は27・3%で、子どもの3・6人に1人が困窮している。市内の中学2年生を対象にした進学先の意向調査では非困窮世帯に比べ、困窮世帯は「大学まで」と回答した割合が17・5ポイント低かった。
大学進学を諦める理由に家庭の経済的事情を挙げる子もおり、経済的格差が進学意欲に影響していることが調査で明らかになった。
「放課後に行き場所がなく、おなかをすかせた子どもに安心して過ごせる場所を提供したい」。當山代表は子どもに向き合う意義を語る。
ただ、中には一時的な見守りでは問題解決が困難な子も見てきた。女子ならば避難施設はいくつもあるが、男子向けの避難施設は県内に整備されておらず、公園などで寝泊まりする子もいるという。
宜野湾市長選を前に、當山代表は「児童相談所の保護要件には当てはまらないものの、親と一時的に離れることが必要な子どもはいる。行政は男子用の避難シェルターを整備してほしい」と要望した。
(梅田正覚)