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陸自、反戦平和資料館に展示の「空薬きょう」の回収中断 対応協議へ 伊江島「ヌチドゥタカラの家」沖縄


陸自、反戦平和資料館に展示の「空薬きょう」の回収中断 対応協議へ 伊江島「ヌチドゥタカラの家」沖縄 ヌチドゥタカラの家に展示された模擬爆弾とみられるものを運ぶ陸上自衛隊員ら=4日、伊江村
この記事を書いた人 アバター画像 金城 大樹

 【伊江】陸上自衛隊第15旅団の不発弾処理隊は4日、伊江村の反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」で展示されている空薬きょうや使用済みの弾丸などの回収のため、資料館を訪れた。隊員は展示品を回収しようとしたが、同館を運営する「わびあいの里」が戦後の米軍被害の歴史を継承するため「展示品は極力残したい」との意向を示したため、回収しなかった。後日、同館や県警、陸自が協議して対応を決める。

 同館は、戦後に伊江島で行われた米軍による射撃演習や土地接収の歴史を後世に残すため、演習などで使われて放置された空薬きょうなどを展示していた。

 県警などによると8月6日、市民から県警本部に「不発弾らしきものが展示されている」と通報があった。県警から要請を受けた陸自は同月8日に1回目の回収を実施し、米国製20ミリ砲弾16発、同90ミリ弾2発、空薬きょう7発の計25発を「不発弾」として回収した。1回で回収しきれず、今回、2回目の回収作業が行われる予定だった。

ヌチドゥタカラの家に展示されている空薬きょうなど

 4日は隊員6人が資料館を訪れ、空薬きょうなどでも内部に火薬が残存している可能性があるとして、危険性除去のため展示品を回収しようとした。一方、わびあいの里は、危険性除去に協力するとした上で、資料を残したいとの意向を強く示し、作業は中断された。

 同館は、伊江島の反戦平和活動家・故阿波根昌鴻さんの「平和のためには戦争の原因を学ばなければならない」という考えのもと、1984年12月に開館し、平和学習の場として活用されてきた。わびあいの里の謝花悦子理事長(86)は「何十年とこの資料館を見てきたが、こんなことになるとは」と戸惑いながらも「戦争の名残が今もあると思うと悔しい。今でも、戦争の後片付けをしなければならないのかと、新たな怒りが湧いてくる」と話した。

 わびあいの里の喜納政次常務理事は「リアルな形で残すことでより戦争について考えてもらえると思う」と、薬きょうなどの実物を展示する意義を訴えた上で「関係機関と協議しながら対応を考えていきたい」と話した。

 (金城大樹)