【うるま】黙々とプールの中を歩く。その距離1.5キロ。うるま市の野辺憲勇さん(91)は毎日、市内のスポーツジムに通い、日課をこなす。「ライバルは自分。いつまでも自分の足で歩きたいからね」。鍛錬を怠らないその姿は、周囲の憧れだ。
米大リーグ大谷翔平選手の勇姿をテレビで見届けた後、野辺さんはジムへ向かう。「いらっしゃいましたよ」。受付スタッフより先に自分から言葉を掛けて、プールへ。全長25メートルのプールを10往復し、隣のジェットバスで10分間休憩する。それを3回繰り返すのが日課だ。
会社をリタイアした後、65歳でキビ農家となった。年間にして収穫量は80トンほど。心がけたのは「ゆっくりでもいいから継続し、目標収穫量を維持すること」。その考えはプールでウオーキングする今も変わらない。「人は時間で区切りがちだが、私は距離を大事にしている」と足の筋力維持を念頭に、1.5キロを1日の目標とする。
「やめようと思ったら負け。いつも自分に言い聞かせている」と継続第一だ。
手を後ろに組んで歩くのが、野辺さんのスタイル。後ろに組むことで背筋が伸び、体幹がぶれないという。「そのおかげか、立って靴下が履けるよ」と教えてくれた。
ジムの副支配人、我謝雅治さんは「なかなかできることではない」と感嘆する。いつまでも自分で歩ける体で。その目標を胸に、野辺さんは今日もプールへ向かう。
(玉城文)