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佐藤優氏講演「世界の動向」 壁の向こうに友人つくる ゴルバチョフメモリアル 第2回人間の安全保障フォーラム


佐藤優氏講演「世界の動向」 壁の向こうに友人つくる ゴルバチョフメモリアル 第2回人間の安全保障フォーラム 佐藤優さんの記念講演に耳を傾ける聴衆。フォーラムには立ち見が出るほど多くの人が集まった
この記事を書いた人 Avatar photo 宜保 靖

 ゴルバチョフメモリアル第2回人間の安全保障フォーラム(NPO法人ANT-Hiroshima、ゴルバチョフ財団日本事務所、特定非営利活動法人ひろしまNPOセンターで作る同フォーラム広島実行委員会主催)が5日、広島市の広島平和記念資料館メモリアルホールで開かれた。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏と平岡敬元広島市長が「いま、ヒロシマが世界に発信すべきことは」と題して対談。核のない世界を実現するには「米国の原爆投下責任を認めさせること」で一致した。また、佐藤さんは「米大統領選と世界の動向」をテーマに記念講演した。対談ではANT-Hiroshimaの渡部朋子理事長がモデレーターを務めた。(敬称略)

 (宜保靖)


佐藤優氏講演「米大統領選と世界の動向」

 今は、キューバ危機以来の核戦争の危機が高まってる。お互いに核兵器を持てば攻撃してこないという核抑止論は破綻した。ウクライナ侵攻でロシアは有利な戦況にあるから核兵器を使う必要がない。問題はイスラエルだ。小さな国だから、イスラエルは先制使用しかない。

 ハマスはテロをしたとしても、イスラエルはやりすぎだ、パレスチナがかわいそうだという意見がある。ガザはハマスが支配している。ガザから流れてくる映像やニュースはどういう意図があるのかを考えることは大事だ。

 昨年10月7日に、ハマスはユダヤ人を虐殺した。民間人がたくさん死んだ。ユダヤ人という理由だけで襲われた。イスラエルの論理でいえば、ハマスはナチスと一緒なのだ。

 イスラエルがイランに攻撃を仕掛けている。イランは本格的な反撃を仕掛けていない。それには理由がある。イランは地下に核開発施設をもっている。イスラエルはその施設をすべて把握していて、すぐにでも破壊できる態勢にある。それをイランに通知している。それでもイランがイスラエルを攻めるなら、イランは核を放棄することを意味する。イランが地上軍の派遣に踏み切ったら、米軍が参戦しNATO軍も自動的に参戦、第3次世界大戦の危機だ。イスラエルの核使用の可能性が高まると、みている。国家の論理でいくと、核兵器を使わせないためには、イスラエルに加担して早く戦争を終結させるということになる。

 冷徹な国家の論理を説明したが、国家の論理には付き合わないことだ。核兵器は絶対に使ってはいけない。なぜ核兵器は駄目なのか、核兵器だからだ。理屈ではない。民の論理だ。対立だけでは解決しない。壁が厚ければ、壁の向こうに友人をつくる。心に訴える。反共のレーガン元米国大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が核兵器を削減する条約に調印した。お互いの心が動いた。

 反核、反戦運動の問題点は力を過小評価することだ。直ちに望んでいることが実現しないからと無力感を感じる。無意識的意識。無力ではない。時代には流れがある。流れが来たときに顕在化する。

 核なき世界を実現させよう。全世界を敵に回してはやっていけない。ナチスや大日本帝国がそうだ。日本の首相がイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談して、世界から孤立したら生きていけないことを訴えることはできるはずだ。


15日、佐藤優氏講演会 那覇・新報ホール

 佐藤優氏が琉球新報で連載するコラム「佐藤優のウチナー評論」の第2巻出版を記念した講演会が、15日午後6時から那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれる。前売り1200円、当日1500円。問い合わせは琉球新報社統合広告事業局、電話098(865)5255(平日午前10時~午後5時)。