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「社会的な存在」を実感 新型コロナから学んだもの 大湾勤子(沖縄病院院長) <女性たち発・うちなー語らな>


「社会的な存在」を実感 新型コロナから学んだもの 大湾勤子(沖縄病院院長) <女性たち発・うちなー語らな>
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 2019年12月に中国武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症による騒動を、当時他山の石として捉えていた。しかし20年2月には沖縄でも最初の発症者が確認され一気に緊張が広がったことを覚えている。

 このウイルスの感染者は無症状のうちに感染源となり得ることが厄介だった。新型コロナ感染症の制御には、ウイルス感染の早期診断、感染拡大防止策の実施、迅速で適切な治療、感染状況のリアルタイムなサーベイランスと情報共有システムが不可欠である。

 ウイルスの病原性は変化し、流行の波が進むたびに感染者数は増加した。物的・人的資源の不足による医療ひっ迫の事態には、医療機関、介護施設、行政機関の間でリアルタイムな連携に努め、患者を守るため、また医療提供体制を維持するために「オール沖縄」で取り組んだ。この間の多くの方々の物心両面にわたる支援は今も心に残っている。改めて感謝申し上げたい。この3年半の間にワクチンや治療薬も開発され、対処法が確立してきたことで、この感染症はようやく落ち着いてきたのである。

 「3密(密閉・密集・密接)」の回避の提唱で、人と人との接触が遮断され、私たちの暮らしは一変した。対面でのコミュニケーションから非接触でのコミュニケーションに生活や仕事のスタイルが変化した。人が密集するイベントが制限され、オンラインで開催されるようになった。「3密」は、2020年の流行語大賞にもなったが、今改めてパンデミック下の診療を考えると、多くの患者さんは疎外感や孤立を感じていたのではないかと思う。お互いマスク姿で、相手の顔や表情が見えにくく、声も通りにくいので、コミュニケーションが制限されて不安であったであろう。特に病院での面会制限は、患者本人だけでなく、家族の不安をも強くし、治療や療養に影響したことは間違いない。

 私個人としては、学会や会議がオンラインで開催されるようになり、移動時間が省けて最初のうちはその利便性を歓迎したが、次第に物足りなさを感じるようになった。人間は、人と人との間で生活する社会的な存在である。直接会って話をし、人の温かさに触れる、あるいは、目に見えない何かに触れることで心のバランスを保つのが本来の姿ではないかと思う。この感染症から多くのものを学んだが、人とのつながりが人を強くすることを改めて感じた。IT化が進む社会の中で、対面のコミュニケーションを大切にしながら歩んでいきたい。

大湾 勤子 おおわん・いそこ

 1961年生まれ、浦添市出身。琉球大学医学科1期生。独立行政法人国立病院機構沖縄病院に勤めて26年目。2023年4月から院長。専門は呼吸器・緩和医療。病院の理念である「患者の立場を尊重し良質で安全な医療」の提供に努めている。