大雨や洪水の後にレプトスピラ症の危険度が大きく高まることを、琉球大学の佐藤行人准教授(46)らがパラオの観光地となっている滝や湖の水に含まれる環境DNAを解析して実証した。大雨や洪水の後はレプトスピラ症の原因となる細菌が約7~80倍に増えたといい、「雨で増水後の川遊びや滝登りは沖縄でも同様のリスクがある」と注意を促している。
レプトスピラ症は、野生動物の排せつ物に含まれる細菌で汚染された土や水に触れることで感染する。頭痛や発熱、筋肉痛となり、重症化すると腎機能障害を起こし、死亡することもある。
熱帯・亜熱帯で発生しやすく、パラオでの感染拡大を受け、同国と共同して佐藤准教授らの研究チームが調査をした。
トレッキングで訪れる人が多い滝と湖の4地点で調査した。2021~22年に、各地点で晴天時と雨天後に採水して空輸。レプトスピラ属細菌と脊椎動物のDNA配列を解読し、国立遺伝学研究所のスーパーコンピューターで解析した。
その結果、合計13種の病原性レプトスピラを検出。4地点とも雨天後に細菌の濃度が濃くなる特徴を確認した。特に洪水後が顕著で、約80倍にもなっていた。
一方、細菌を宿すとみられるノネズミ、オオコウモリ、クマネズミ、ブタなどのDNAは天候との相関関係は必ずしもなかった。細菌は土の中深くで増殖し、雨によって地表に出てくることも考えられるという。
これまでも雨の後に感染しやすいと言われてきたが、環境DNAによる確認は初めてという。9月発行の国際熱帯医学連盟の学術誌に論文が掲載された。
レプトスピラ症は国内での発生の約半数を県内が占める。昨年の患者報告は全国49人のうち沖縄が22人だった。観光客の感染が目立ち、佐藤准教授は「安心安全な観光のため、台風後の川遊びを控えるなどの配慮が必要だ」と指摘している。
(宮沢之祐)