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難工事、完成見通せず 辺野古新基地建設 普天間飛行場の返還を疑問視する声<衆院選・争点の現場から>6


難工事、完成見通せず 辺野古新基地建設 普天間飛行場の返還を疑問視する声<衆院選・争点の現場から>6 米軍キャンプ・シュワブのゲート前で座り込み、辺野古新基地建設に抗議する市民ら=22日、名護市辺野古
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「新基地、反対!」「埋め立てやめろ!」。

 米軍普天間飛行場=宜野湾市=の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設工事が進む米軍キャンプ・シュワブの工事用資材の搬入口。建設に反対する市民らはプラカードを掲げ、搬入口前に座り込みながらシュプレヒコールを上げて抗議する。

 県内では新基地建設に反対する世論が根強いが、今年から軟弱地盤が広がる大浦湾側の埋め立て工事が始まり、建設は着々と進展をみせている。政府は使用開始まで最低でも12年がかかるとしている。使用開始に伴い、普天間飛行場は全面返還される見通しだ。

 だが、難工事が予想される軟弱地盤埋め立ての明確な完了時期は示されておらず、その間、普天間飛行場を抱える宜野湾市民の負担は続く。その上、事業費の増大が予想される。防衛省が総事業費として掲げる9300億円のうち、2023年度末で約57%に当たる約5319億円が支出済みで、総事業費の試算を超過する可能性が高い。

 辺野古区在住の50代女性は「新基地が完成すれば米軍機からの落下物や騒音などが不安」と新基地建設に反対する。その上で「基地ができるまであと何年かかるのか。そもそも完成したとしても、軟弱地盤の上に造った不安定な滑走路を本当に米軍が使うのか」と述べ、普天間飛行場の全面返還を疑問視した。

 一方、宜野湾市で9月に実施された市長選では、普天間飛行場の早期の危険性除去に向け、新基地建設を容認する姿勢を示した佐喜真淳氏が当選した。佐喜真市長を支持した男性は、街の中心に位置する普天間飛行場から派生する騒音や事故に懸念を示し、「市民の思いは普天間飛行場の一日も早い返還だ。そのために辺野古移設を容認せざるを得ない。反対派は移設後、改めて抗議活動をして代替施設(新基地)の全面返還を目指したらいい」と強調する。

 新基地建設の進展に向けた外堀は埋まりつつある。だが、今年で10年目のシュワブ前の抗議活動は止まらない。

 「諦めてはいけない。市民が声を上げることが重要だ」。辺野古区の女性は3カ月に1回は米軍キャンプ・シュワブゲート前での抗議に参加する。「県民の安全、安心のために政治をしてほしい。そのために税金を使うことは賛成だ」と語り、新基地建設を含めた基地負担の解消を訴えた。

 (武井悠、梅田正覚)