国の「首里城復元に向けた技術検討委員会」の委員長を務める高良倉吉琉球大名誉教授に意義や思いを聞いた。(聞き手・吉田健一)
―首里城再建に向けた作業の進ちょくは。
「2年後の秋に新たな正殿が完成予定だが、当初の工程表から見ても順調に進んでいる。外壁の下地の塗装も始まっているほか、龍頭棟飾(りゅうとうむなかざり)の制作も順調だ。各分野の職人が復元作業に携わり、持ち味を発揮してもらっている」
―「令和の復元」の特徴は何か。
「木材や塗料、瓦などで県産資材を多く使用している。正殿独特の赤色を表現する塗料『久志弁柄』は、名護市久志の水辺に存在する鉄バクテリア由来であることが分かった。幸運が重なり屋根裏で赤瓦の重みを支える小屋丸太梁の一部は、県産のオキナワウラジロガシを使うことができた」
「平成の復元と比べて、建物自体に大きな変化はないが、細部でさまざまな変化がある。例えば、火災で焼失し、現在制作中の扁額『中山世土(ちゅうざんせいど)』は、尚家に残されていた古文書の研究が進んだことで、地板の基調が赤から黄色に変更される」
「首里城は沖縄の漆芸技術が応用されているように、これまで培ってきた技術や研究の蓄積が再建に反映される」
―首里城再建の意義は。
「焼失したことで首里城の価値に気付いた人も多いと思う。首里城の復元によって首里城の研究は始まった。琉球の文化、技術、美意識がどうだったのか。琉球処分を境に失われたものを、研究者が必死になって古文書などを読み解いてきた。県民の皆さんには、琉球が誇った技術の高さを首里城の再建から感じ取ってほしい」