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【深掘り】辺野古訴訟敗訴、対応に苦悩する玉城デニー知事 「痛々しいくらい考え込んでいる」


【深掘り】辺野古訴訟敗訴、対応に苦悩する玉城デニー知事 「痛々しいくらい考え込んでいる」 定例会見で辺野古裁判について質問を受ける玉城デニー知事=8日午前、県庁
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 名護市辺野古の新基地建設を巡る2件の訴訟で県の敗訴が確定し、11日で1週間が経過したが、玉城デニー知事は現在も態度を表明していない。県は設計変更申請を承認する義務が生じているが、知事周辺は「知事は一人で痛々しいくらい考え込んでいる」と語る。国連人権理事会での演説前にも判断を示すとの一部報道もあったが、玉城知事は現在も「検討中」と沈黙を貫く。どのような判断をするのか県や与党関係者も読みかねている。

 「判決以降の取り扱いには、現在部局とどのような対応をとるかについて検討しており、この段階での発言は控えたい」

 判決の日以来、初の定例会見を開いた8日、玉城知事は判決の対応について言及を避けた。

 6日には敗訴後初めて、県幹部と県側代理人弁護士らを交えた意見交換を実施した。この際も知事は、意見交換終了後、記者団に対し「いろんな方々からご意見をたまわっている状況だ」と述べるにとどめた。

 辺野古新基地建設阻止は、玉城県政誕生の後ろ盾となった民意だ。

 県関係者は玉城県政が2期目に入って1年もたたない中で「もし承認したら大幅に求心力が落ちかねない。簡単に承認とは言えない。答えは知事の胸の中だ」と話した。

 仮に不承認にかじを切った場合、玉城知事のほか県職員らは事業を不当に遅延させたとして、国などから損害賠償請求訴訟が提起されるとの懸念もあり、知事の判断を難しくしている。

 県庁内では「悪法も法」などとして、示された判決には従わなければいけないとの意見がくすぶる。

 だが、承認論を唱える県事務方の間でも、県の主張の中身については言及しなかった最高裁判決への疑念は根強い。

 別の県関係者は「裁決には従うべきだという、それだけの判決だ。国地方係争処理委員会に審査を申し出たり、高裁に訴えたりといった法律上の枠組みは何のためにあるのか」と疑問視した。「こんな判決がまかり通れば国はやりたい放題になる。他の県にも影響を与えかねない。戦前に逆戻りだ」と地方自治への影響を懸念した。

 判決から1週間経過しても知事の判断が見えない状況に県政与党内にも不安がくすぶる。判決以降、知事と与党県議団との面談が行われていないことも拍車を掛ける。

 与党県議は知事との面談は「判決前にすませた。知事を支えるとしっかり伝えている」と強調する。与党県議団として知事面談を調整することも「今は必要ない」と言い切る。「われわれが慌ててどうするのか。どっしり構えて知事を信じて待つのが与党の役割だ」と語った。

 (知念征尚、佐野真慈、梅田正覚)