名護市辺野古の新基地建設に伴う大浦湾側の軟弱地盤改良工事の設計変更申請を承認するよう国土交通相が県に求めた勧告について、国が定めた期限を迎えた27日、玉城デニー知事は勧告に従わず、承認の是非について判断を見送った。当面、対策を検討する時間を確保した形だが、国は次の段階となる「指示」を行う見通しで、事態は着実に進む。県事務方は「残り時間は少ない」と焦りをにじませた。 (1面に関連)
「県民、行政法学者などからさまざまな意見が寄せられており、県政の安定的な運営を図る必要がある」
27日、県庁で記者団の取材に応じた玉城知事は緊張感をにじませながら、判断を見送った理由を語った。県事務方の一人は「知事の最終的な判断は分からない」としつつ「判断と異なる意見をもつ人にも理由を説明できるよう、いろいろと検討する時間が必要ということだ」と解説した。
玉城知事が判断を見送ったことに対し、政府関係者の一人は「典型的な判断先送り、思考停止で、政治家として失格だ」と批判した。国交相の指示に向け「遅らせる理由はない」として速やかに手続きを進める考えを示した。
知事が承認をしても、このまま承認せず代執行訴訟に突入しても、最終的には承認を得て大浦湾側の地盤改良工事を始められると冷静に受け止める向きもある。防衛省幹部は「なるようにしかならない」と語った。
一方、勧告期限を前日に控えた26日、玉城知事は県政を支える与党県議の代表らと面会した。
辺野古を主題にした玉城知事と与党の面談は4日の最高裁判決後、初めてとなる。
県サイドからは代執行訴訟になった場合に「反論する理由が浮かばない」といった一部弁護士の見解や「何百億」にも及ぶ可能性があるという賠償が求められる可能性への懸念が説明された。
これに対し与党側は「辺野古移設反対という民意を実現したいとの考えは全員が一致」(出席者の一人)したものの、実現策については、あくまでも承認せず県の正当性を訴え続けるべきだとの声のほか、一部からは「苦渋の判断」として承認した上で選挙で信を問うといった案もあったという。与党県議それぞれも頭を悩ませる難しい状況が浮き彫りとなった。
出席者の一人は「各会派、個人で意見がさまざまある。与党内でもある程度、考え方をすり合わせた方がよいのではないか」と、対応を急ぐ必要性を指摘した。
(知念征尚、佐野真慈、明真南斗)