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【識者談話】国民に共感広げて 知事、辺野古承認せず 佐藤学氏(沖縄国際大教授)


【識者談話】国民に共感広げて 知事、辺野古承認せず 佐藤学氏(沖縄国際大教授) 佐藤学氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄県の米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に関して、大浦湾側の軟弱地盤改良工事の設計変更申請を承認するよう斉藤鉄夫国土交通相が県に求めた指示について、玉城デニー知事は期限を迎えた9月4日、「期限までに承認を行うことは困難だ」と述べ、現段階で承認を行わない考えを表明した。これについて識者の見解を聞いた。


 9月4日の最高裁判決で県敗訴が確定した時点で、県にはこれ以上、新基地建設を止めるカードはなかった。玉城デニー知事は、設計変更申請を「承認」すると、支持基盤の「オール沖縄」が瓦解(がかい)すると考え、今回、国土交通相の「指示」期限までに判断を示さなかったのだろう。新基地建設反対の意思を維持していることを示した形だが、時間稼ぎにしかならない。代執行を経て大浦湾の埋め立て工事は決定的となった。
 オール沖縄は新基地建設反対の旗印の下に集った政治勢力だ。保守層や企業が離れ退潮が指摘されるが、今回を契機に新基地建設が止められない流れが明確化し、退潮に拍車がかかるだろう。勢いのある時により幅広いリベラル勢力を育む体制づくりをしてこなかったツケが回った。
 日本の司法が米国との安全保障絡みで政府を負かすことはないことは当初から自明だった。そういう状況では、今回の事態に至ったのは沖縄の民意をくまない日本社会全体の問題だ。
 先の最高裁判決は「承認しないことは違法」と判示しているだけで「新基地建設は正しい」との判断は示してはいない。日本社会全体の問題なのだから、県は軟弱地盤の存在や青天井の予算の問題などを愚直に訴え、国民に共感を広げていくしか新基地建設を止める手段は残されていない。 
(政治学)

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