玉城デニー知事ら県の幹部は、国交相の指示の期限内に承認をしないという判断に至るまでに、さまざまな検討を重ねた。関係者によると、承認した場合や承認しないと明言した場合、今回選択したように判断を示さずに期限を迎えた場合など各ケースごとに県政の運営にとって長所と短所を想定した。
承認しないと明言した場合、政治面では辺野古反対の姿勢が鮮明にできる。一方で国による代執行訴訟が提起され、県にとっては厳しい局面が続く。
ある県職員は、承認しないと明言すれば、県の担う行政全般に影響が生じると話す。「県民に指導する場合など『県庁も法律を守っていないのに』と言われることもあるだろう」として、承認によって、法令順守が求められる行政としての正当性を確保する必要があるという考え方だ。
承認した場合、損害賠償請求のリスクを回避できるという意見もある。関係者によると、玉城知事も周辺に「職員を守る必要がある」などと話していたという。ただ、損害賠償は政府内にも実現性を疑問視する声がある。政府関係者の一人は「天候による遅延などもある中、(工事の遅れの)どこまでが県の責任かを算出して証明するのは難しい」と話した。ある与党県議は「賠償額が数百億円に上るという話も聞いたが、根拠が分からない」と話した。
一方、承認すれば、県民投票などで繰り返し示された辺野古埋め立て反対という民意に反する。玉城知事は新基地建設反対を公約に当選したこともあり、知事周辺からは「承認したら知事の政治生命は終わりだ」という声もあった。最高裁の敗訴が理由とはいえ、県が新基地を承認する形になることは、大きなダメージとなる。
承認かどうかの判断を期限内に示さなかった場合、結果的に承認をしなかったことになり、実質的に基地建設に反対する姿勢を示しつつ、承認しないことを明言した時に比べ後の選択肢を多く残せる。ただ、期限内に承認していないため、国から代執行訴訟を提起される可能性が高く、県関係者からは「他に手だてがない状況では有効な打開策とはなり得ない」という指摘もある。
(沖田有吾)