「判断に至れなかったと、国交相に申し上げねばならないということに至った訳です」。4日午後5時から、沖縄県庁1階ロビーで開かれた記者会見で、玉城デニー知事は“苦渋の決断”をにじませた。最高裁の判決を行政の長として受け止める一方、県民投票などで示された辺野古新基地建設反対の民意を尊重する立場でもあり、司法と民意のはざまで苦悩した様子がうかがえた。
県庁ロビーには会見設定時刻の30分ほど前から大勢の報道陣が集まり、二重にも三重にも玉城知事を取り囲んだ。ほぼ時間通りに現れた玉城知事はコメントを読み上げた。「期限までに承認を行うことは困難である」「対話に応じるよう粘り強く求めていきたい」という部分は、前を見つめて訴えた。
報道陣からは判断に至った経緯や「県民に分かりにくい判断では」といった厳しい質問が相次いだ。玉城知事は時折メモに目を落としながら、質問者を正視し、淡々と答えた。国への批判的な言葉はほとんど口にすることはなかった。
強調したのは、9月27日に行政法学者らが提出した声明や、最高裁判決後に県庁に寄せられた県民からの意見だった。県の担当課職員によると、県の敗訴が確定した最高裁判決以降、県庁に電話などで「裁判は不当だ」「不承認を貫いて」という声が数多く寄せられているという。中には「司法に従うべきだ」という声もあるものの、県の不承認の立場を支持する声の方が多いという。
会見で「代執行訴訟は厳しい戦いになる」と記者から尋ねられ、玉城知事はため息をつき、右手で左手首をぎゅっと握った。「対話による問題解決するための姿勢を示していきたい」と重ねて訴え、かたくなな政府に「柔軟な対応」を求めた。
会見時間が15分経過したところで事務方は「そろそろ時間です」と終了を促したものの、質問は途切れず、18分を過ぎたところで終了。知事は深々と一礼した後、足早に車に乗り込んだ。
(中村万里子)