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【深掘り】沖縄の米軍、海兵沿岸連隊を発足 島での分散戦闘担う 訓練激化に懸念 米軍再編にも影響か


【深掘り】沖縄の米軍、海兵沿岸連隊を発足 島での分散戦闘担う 訓練激化に懸念 米軍再編にも影響か 第12海兵沿岸連隊旗を掲げて行進する隊員ら=15日午前9時50分、金武町のキャンプ・ハンセン(喜瀨守昭撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 在沖米海兵隊が米軍キャンプ・ハンセンを拠点とした「第12海兵沿岸連隊」(MLR)を発足させた。部隊を島しょ地域に分散させて相手と戦う米国の「遠征前方基地作戦」(EABO)に最適化させた部隊で、一部兵器の変更が見込まれる。日米両政府は基地負担の強化にはつながらないと強調するが、県内の訓練激化や在沖米軍再編などへの影響が指摘される。

 「MLRの設計は機敏性、海軍統合、前方展開態勢を重視、進化する作戦上の要求に沿うものだ」。第3海兵師団司令官のクリスチャン・ワートマン少将は、式典で発足の意義を強調した。

念頭

 EABOはミサイル能力の向上が著しい中国を念頭に、相手のミサイル脅威圏内で戦うことを前提とした運用構想だ。

 有事となれば部隊は軍事拠点を飛び出し、攻撃をしては次の場所に迅速に移動するなど相手の攻撃を受けないように転々としながら持ちこたえる構想を描く。

 EABOに最適化されたMLRは、砲兵部隊が中心だった従来の構成を見直し(1)対艦ミサイルを扱う「沿岸戦闘チーム」(2)対空ミサイルを扱う「沿岸防空大隊」(3)兵たんの役割を担う「沿岸後方大隊」―で構成する。
 機動性を高めるため、兵器をより軽装なものに入れ替える予定だ。

 現行の高機動ロケット砲システム「ハイマース」から、最新型の地対艦ミサイル「NMESIS」(海軍・海兵隊遠征対艦阻止システム)に変更を予定する。車両は運転席をなくすなど無人化、小型化し、搭載する短距離ミサイルを離れた位置から操作できる。

 防衛省関係者は「NMESISに替わるのは大きい。対艦戦闘に使える数が多くなり、作戦の幅が広がる」と期待する。

影響

 自衛隊は、海兵隊のEABOとの連携を目指してきたが、MLR化に伴い、部隊構成も離島地域に駐屯する陸自部隊と共通することになり「さらに連携しやすくなる」と期待する。

 15日の式典には森下泰臣陸上幕僚長が来県し式典に出席するなど、陸自もMLRの発足を重視する姿勢を鮮明にした。

 一方、EABOでは民間地域も含めて部隊が動き回ることが想定される。民間地域も攻撃にさらされる危険をはらむなど、被害が懸念される戦略でもある。

 EABOを実践するためには、米軍基地がない島しょ地域でも活動のノウハウを積む必要がある。県内での訓練が今後ますます増加していくことは必至の状況だ。

 県関係者は「MLRへの改編による訓練内容や訓練場所の変化、地元への影響について説明がない」と話し、影響が不透明なまま部隊改編したことに警戒感を示した。

 MLRの発足に当たり、前身となる第12海兵連隊のグアム移転も取りやめとなった。

 政府は再編計画の基本原則は維持し、再編後の在沖米海兵隊の規模(約1万人)にも変更はないとしている。だが、代わりに移転する部隊は固まっておらず、再編計画の遅れも懸念されている。
(知念征尚、明真南斗)