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【深掘り】軽視される日本政府 全オスプレイ停止 米の動向を把握しきれず 続いた1週間飛行


【深掘り】軽視される日本政府 全オスプレイ停止 米の動向を把握しきれず 続いた1週間飛行 米軍普天間飛行場に駐機されたMV22オスプレイ=宜野湾市(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 鹿児島県・屋久島沖で米空軍の垂直離着陸CV22オスプレイが墜落した事故を受け、米軍は7日、全世界で初となるオスプレイ飛行停止を発表した。一方、事故後1週間も、危険性を抱えたままオスプレイは飛行し続けていたことになり、米軍は5日に「安全宣言」したばかりだ。そんな中、急転直下の飛行停止の決定に日本政府内でも驚きの声が上がる。米軍の動向を把握しきれない日本政府、その日本側を軽視する米側。いびつな関係が改めて露呈した。

 岸田文雄首相は7日「飛行の安全が確認されなければ飛行しないことを明確に求めてきた」と強調した。だが実際は「停止」という表現を避けて飛行継続の余地も残した要請で、運用を止めるかどうかの判断は米国にゆだねていた。

■急転直下

 米軍は事故後もオスプレイの運用を続け、5日には改めて安全性を強調して飛行継続を正当化する声明を出した。6日時点では防衛省内でも米軍が飛行を続けるとの見方が大勢だった。運用停止発表を受け、7日朝から防衛省は情報収集に追われた。

 7日の参院外交防衛委員会。オスプレイの運用停止をいつ知ったのか問われた木原稔防衛相は「ひょっとすると新たな情報が発信されるかもしれないという事前の連絡は(米側から)頂いていた」と明らかにした。

 ただ、米軍は7日の発表文書で「操縦士と乗組員の安全は私たちの最優先事項だ」と記すにとどまり、日本政府や地元への配慮には言及していない。事故の内容を踏まえて独自に運用停止方針を決定したとみられる。

 防衛省幹部は「求めてきたことに近づいた。(米軍の飛行継続に対し)『懸念』という言葉まで使って働きかけてきた意味がゼロだったとは思いたくない」と語った。

■危険放置

 普天間飛行場を抱える宜野湾市や県は事故直後から原因が明らかになるまでの飛行停止を求めてきた。だが米軍は海兵隊・海軍仕様の機体の飛行を続けた。普天間飛行場と嘉手納基地だけでも事故後約140回の離着陸が確認された。

 知事周辺の一人は全世界で飛行停止した米軍の対応について「危険性を認めたということだ。約1週間、危険な欠陥機が県民の頭上を飛んでいた」と憤った。県幹部は「もっと早く止めるべきだった。日本政府もしっかり飛行停止を求めるべきだ」と指摘し「せめて原因究明と再発防止が図られるまでは止めるべきだ」とくぎを刺した。

 今回の運用停止は米軍が自主的に取った措置である以上、再開も一方的に通告される可能性は否めない。日本政府が米軍の決定を追認するのではなく、主体性を持って米軍の措置を検証できるのか問われる。

 2016年に名護市安部の沿岸部にオスプレイが墜落した際、米軍はすぐに飛行を止めたが、6日後に飛行再開を宣言し、日本政府も容認した経緯がある。

 知事周辺は「日本政府は米側が安全としたら追従し、再開を認めるのではないか。それだけは許してはならない」と語った。

 (明真南斗、知念征尚、佐野真慈)