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米軍保有のPCB処理、米国移送決定したのに…なぜ日本が肩代わり? 住民「政府は情けない」


米軍保有のPCB処理、米国移送決定したのに…なぜ日本が肩代わり? 住民「政府は情けない」 沖縄防衛局が米軍から引き取ったPCB廃棄物の一部(県への情報開示請求で本紙が入手した資料より)
この記事を書いた人 Avatar photo 新垣 若菜

 在日米軍が保有する有害なポリ塩化ビフェニール(PCB)を日本政府が20年以上も税金を使って処理する状況が続いている。米軍が保有する有害物質に関しては、普天間飛行場の有機フッ素化合物(PFAS)を含む汚染水を防衛省が引き取って処分したことも記憶に新しい。住民からは「プライドはないのか、日本政府の姿勢が問題だ」などのあきれ声が漏れる。

 在沖米軍のPCBを巡っては、1960年~70年代に嘉手納弾薬庫のため池への投棄、96年に恩納通信所跡、2002年には米軍から引き継いだ航空自衛隊恩納分屯地でそれぞれ大量のPCB含有汚泥が見つかった。

 2000年に日本からの搬出後に、米有害物質規制法で米国への持ち込みが禁じられているとして米本国で荷揚げを拒否され、貨物船が太平洋上で迷走したあげく日本国内に戻ってくるなどの問題も発生した。その後、米国防総省が同法の適用除外を申請し、02年に在日米軍が保管する全てのPCB含有機器の移送方針が決まった。

 にもかかわらず、防衛省の資料で03年~22年度間も日本政府が処理している状況が裏付けられた。米軍の原状回復義務が免除される返還跡地のみならず、県内では処理の法的根拠がない運用中の基地でも18~22年度までの5年間で2200万円を肩代わりしていることが分かっている。

 米軍基地による環境汚染問題に取り組んできた照屋正史さん(67)は「言ったら処理してくれるという、米軍にとってこんな居心地の良い場所はないだろう」と皮肉る。米軍基地周辺から検出されるPFASの問題にも触れ「日本が処理を肩代わりする状況が当たり前になっていて、怒りを通り越して『またか』としか思わない。基地の立ち入り調査もさせてもらえず、なんて情けないんだ」とため息をついた。

 (新垣若菜)