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【深掘り】デニー知事「対話重ねる一歩になれば」 林官房長官と会談も政府と溝 地元要望に具体策なし


【深掘り】デニー知事「対話重ねる一歩になれば」 林官房長官と会談も政府と溝 地元要望に具体策なし 会談を終え、県庁を後にする林芳正官房長官=28日午後3時25分、(又吉康秀撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 林芳正官房長官が就任後初来県し、玉城デニー知事や基地周辺の首長らと面談した。各地で課題の基地負担について相次いで要望を受けたが、解決に向けたやりとりは「具体的にはなかった」(出席した首長)。林氏が唯一、「開催の方向で調整」と言明した普天間飛行場負担軽減推進会議作業部会についても、県などが求める推進会議本体の開催とは異なり、溝が横たわる。

 辞任した松野博一氏に代わり、2023年12月に就任した林氏は1月初旬の来県を予定していた。大浦湾での着工前に政府方針を玉城知事に伝える運びだった。能登半島地震発生で延期され、着工後の来県で、面談先や視察内容は過去の閣僚をおおむね踏襲した。

 沖縄の基地負担軽減の取り組みをアピールするため、14年に官房長官兼務で新設された「沖縄基地負担軽減担当相」のポスト。初代の菅義偉氏こそ新基地建設問題や沖縄政策への関与がうかがえたものの、その後は形骸化も指摘される。自民党関係者は林氏について「どれだけ本腰を入れるかは、今回受けた印象次第だろう」と話した。

 日程の最後に面談した玉城知事は、非公開だった約10分間をもっぱら基地問題に割いた。

 普天間飛行場の騒音問題を巡っては、前日に講義を受け持った沖縄国際大でのやりとりを基に、オスプレイの運用停止で「実質的に騒音が低下している」と説明した。

 要望書で米インド太平洋軍司令官がオスプレイの飛行停止について「作戦に影響はない」と言及したとされることに触れ「返還までの間も同飛行場の一日も早い危険性の除去等は実現可能であることを裏付ける」と強調し、早期返還を迫った。

 これに対して林氏は記者団に対し、返還期日の明示は「現段階で示すのは困難」と説明。代わりに普天間飛行場負担軽減会議の作業部会を開き取り組む姿勢を示した。

 作業部会は従来、年に1度程度の頻度で開催。出席者は官房副長官や副知事らで「何かが動く場ではない」(県関係者)とされる。メインとなる推進会議は開催のめどが立たない状態が続く。

 玉城知事は会談終了後、記者団に対し「対話を重ねていく一歩になればいい」と、会談を評価する発言を繰り返した。一方で辺野古断念を求める県と「危険性除去のための唯一の方策」として推進する政府との間で、「対話」のイメージが乖離(かいり)していることも否めず、模索が続く。

(知念征尚、明真南斗)