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米軍出撃の「隠れみの」国連軍地位協定とは? 知られていない機能、識者「民主的統制上で問題」<沖縄の国連軍基地~基地固定化の源流>1の続き


米軍出撃の「隠れみの」国連軍地位協定とは? 知られていない機能、識者「民主的統制上で問題」<沖縄の国連軍基地~基地固定化の源流>1の続き 1979年にマンスフィールド駐日米大使(当時)が国連軍への要員派遣に難色を示していた参加国のニュージーランド側に送った秘密公電。(川名晋史氏提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 梅田 正覚

 1950年の朝鮮戦争勃発時に発足した朝鮮国連軍。戦争中、沖縄の米軍基地は爆撃機の出撃拠点として使用された。休戦から70年を経た今もなお、朝鮮国連軍基地の地位を有する米軍基地は米軍以外の外国軍も使用できる状態が続く。その法的根拠は日本と参加国が54年に締結した国連軍地位協定にある。

 地位協定では、国連軍が在日米軍基地を使用し続けるには、米軍横田飛行場(東京)内にある後方司令部に米国以外の参加国からの要員派遣を義務づける。現在、オーストラリア空軍出身の司令官とカナダ、米国から派遣された軍人軍属計5人が後方司令部に所属する。

 休戦状態が続く中、参加国が国連軍に要員を派遣し続けるのはなぜか。東京工業大の川名晋史教授はその秘密を解き明かす秘密公電を入手し、公表した。77~88年まで駐日米大使を務めたマンスフィールド氏が加盟国に対して国連軍地位協定の「特権」を説明する内容だ。

 マンスフィールド大使は79年、参加国に秘密公電を送り「軍用機、艦船、人員、物資を自由に日本から出入りさせることができ、日本の基地網、訓練場、後方支援などを利用することができる」と強調した。70~80年代にかけて参加国は財政難から日本への軍人派遣に難色を示しており、大使は水面下で説得に乗り出していた。

 マンスフィールド大使は仮に朝鮮戦争が再開した場合、日本から国連軍が出撃することに国民から反発が高まるが「国連軍が維持されることで日本は米国と同盟国が迅速に行動することを許可するのに困難はないだろう」と見通した。「われわれは国連軍地位協定を同盟国と協調して行動するための法的な『隠れみの(CLOAK)』とみなしている」

 川名教授は「当時は革新勢力が強かった時代で、米軍が日本から出撃すると日米安保が不安定化する可能性もあった。米側としては自軍の戦闘作戦行動を覆い隠すために国連の旗を使う狙いがあった」と説明した。その上で「国連軍の機能は国民にほとんど知られていない。有事の際にオリーブの旗をつけた航空機や艦船が米軍基地に殺到して初めて白日の下にさらされることになる。民主的統制上問題が大きい」と指摘した。

 (梅田正覚)