1994年の北朝鮮の核開発を巡り、米国は北朝鮮核施設の爆撃を計画した。全面戦争へ発展する寸前まで緊張感は高まった。当時のペリー米国防長官は沖縄の海兵隊は韓国に侵攻する北朝鮮に対する「やりの先端」と表現した。「大量の航空機、戦闘継続のための軍事物資、そして新たな追加兵力。それらを順次、日本を経由して戦地である朝鮮半島に送り込むというのが、われわれの有事計画の骨子だった」と後に明かした。
朝鮮戦争が再開した場合、米軍の後方支援を担うのが英国やオーストラリアなどが参加する「朝鮮国連軍」だ。国連軍は独自の地位協定に基づき、沖縄の3カ所を含む国内7カ所の米軍基地使用が認められている。国連旗を掲げた軍用機と艦船が連日、国連軍基地の普天間飛行場と嘉手納飛行場、ホワイトビーチに殺到する事態が現実に迫っていた。
米側は96年の日米特別行動委員会(SACO)の際、普天間飛行場の移設条件に「国連軍基地の維持」を挙げていたことが米公文書で判明している。仮に名護市辺野古の新基地が完成して普天間飛行場が返還された場合、国連軍参加国は「合同会議」を開催し、新基地を新たな国連軍基地として指定する公算が大きい。
新基地に米軍以外の国連軍の航空機や艦船が平時から往来することになる。だが国連軍の運用は日本側に明らかにはされない。外務省は事前に基地を使用する旨の連絡はあるとしつつも「運用についての具体的な通報はない」とした。
14年4月の参院外交防衛委員会で当時外相だった岸田文雄首相は、有事の際に国連軍は新基地を使えるのか問われ「代替施設(新基地)における扱いについては、今後、国連軍地位協定、当事者間で協議していくことになる」と述べた。 (梅田正覚)
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1950年の朝鮮戦争で発足した朝鮮国連軍は、米軍を中心とした多国籍軍が在日米軍基地を自由に使用できる権利を有する。米国がひそかに国連軍基地の維持に努め、沖縄の基地固定化の源流となっている実態を東工大の川名晋史教授の研究を通し明らかにする。