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台湾有事で「北朝鮮が中国と連動」の見方も その時「事前協議」と沖縄の基地は <沖縄の国連軍基地~基地固定化の源流>(4)


台湾有事で「北朝鮮が中国と連動」の見方も その時「事前協議」と沖縄の基地は <沖縄の国連軍基地~基地固定化の源流>(4) 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(当時、左)と中国の習近平国家主席=2019年1月、中国・北京
この記事を書いた人 Avatar photo 梅田 正覚

 中国が台湾の武力統一に乗り出す「台湾有事」の際、同盟関係にある北朝鮮も連動して軍事行動を起こし、米軍の行動を阻害するとの言説が浮上している。

 2022年9月、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は台湾有事の際、北朝鮮が韓国に挑発行為を仕掛ける可能性も高まるため、その対応が「最優先課題」になるとの認識を示した。

 朝鮮戦争で発足した国連軍だが、台湾周辺を含む「極東」で行動できることが日米で取り決められている。北朝鮮の軍事行動と台湾有事が「連動」していると日米が主張すれば、米軍を主体とした国連軍は米軍基地を活用した後方支援を展開できるとの見方がある。

 有事の際の最前線基地となる沖縄が他国から攻撃を受ける可能性もある。日本は米軍の軍事行動に自動的に巻き込まれることを避けるため、1960年の日米安保条約改定の際に在日米軍基地から直接に戦闘作戦行動を取る際は日本政府との「事前協議」を米国に課した。事前協議は沖縄が再び戦争に巻き込まれないための「最後の切り札」とも言えるが、実は「抜け道」があった。

 日米は60年の安保改定時、朝鮮半島有事の際の国連軍としての米軍の軍事行動は事前協議を不要とする密約「朝鮮議事録」を交わしていたからだ。

 台湾有事に北朝鮮も「連動」しているとの主張が認められれば、米軍は「国連軍の一員」に衣替えすることもできる。朝鮮議事録に基づけば米軍(国連軍)は事前協議なしで在沖米軍基地から台湾有事への戦闘作戦行動に入ることができる。

 秘密合意の朝鮮議事録は今も有効なのか。外務省は「今日的な意味合いはないと考えている」と有効性を否定した。背景に1969年の佐藤栄作首相(当時)による演説がある。佐藤氏は「事前協議に対し前向きに、かつすみやかに態度を決定する」と述べた。

 事前協議を必須と捉えているこの演説について外務省は「対外的な表明であり、(朝鮮議事録は)実質的に置き換わったものと考えている」との立場だ。

 一方、東京工業大の川名晋史教授は、米国は沖縄返還後に日本政府と朝鮮議事録の有効性についての確認をあえてしておらず、今も「有効」だと受けとめている可能性が高いと解説。「米国は万が一、日本に反米政権が成立したとしても、有事の際に自由に軍事行動を展開するための『保険』として国連軍を維持している」と指摘した。

 その上で「中国は朝鮮戦争の当事者でもある。『朝鮮半島と台湾の問題は連動している』との整理が成り立てば、有事の際に国連軍の枠組みを使い、事前協議なしで戦闘作戦行動に入ることができる」と語った。

 (梅田正覚)