在韓米軍の戦後史に関する共著もある国際政治学者の我部政明氏(沖縄対外問題研究会代表)に朝鮮国連軍の成り立ちや問題点を聞いた。
―朝鮮国連軍の成り立ちは。
「第2次世界大戦後、米国は日本の植民地だった韓国を占領したが、軍事的重要性は感じていなかった。軍政もうまくいかなかったので、将来的な独立を見込んで部隊削減をしている1950年6月に北朝鮮が侵攻してきて朝鮮戦争が起きた」
「北朝鮮の侵略排除に向けた50年6月末から7月はじめにかけて、米軍指揮下の統合軍設置の国連安保理決議に基づき、朝鮮『国連軍』の名称が付けられた。国連憲章に基づく正式な国連軍ではない。沖縄の基地は爆撃機の出撃拠点として重要性を増したが、それ以上に重要視されたのが後方支援を担った日本本土の基地だった」
―現在の国連軍司令部の枠組みへの認識は。
「米国にとって国連軍が軍事的に必要か否かで言えば不要だろう。国連軍司令部は設置当初から韓国軍の指揮権を有していたが、78年に米韓連合軍司令部の発足時に同軍の司令官となる在韓米軍司令官(国連軍司令官を兼務)に指揮権を移譲した。それ以降、国連軍の名前を使うことは減った。休戦協定監視が主任務だ。21世紀に入り、米国は朝鮮半島に張り付いてきた米軍を他の戦域に投入できるように国連軍枠組みの再利用を検討した」
「ただ日本政府にとっては別。かつて国連軍の名の下で在日米軍は朝鮮へ出撃できるとする日米了解があった。国民の多くは国連の名にある種の正統性を感じているのではないか。国連を冠していれば豪軍やカナダ軍が北朝鮮の『瀬取り』対策で在日米軍基地を使っても問題とされないようだ。2017年の安保理での対北朝鮮制裁決議による瀬取り対策を、1950年に発足した朝鮮国連軍を受け入れる地位協定が法的に適切なのか疑問視する声はある」
「現行の日米安保条約第7条で日米安保は日米それぞれが負う国連の活動に『どのような影響も及ぼすものではなく』と明記されている。これは、日米安保が例えば朝鮮国連軍への米国の関与に超越しないことを示す。たとえ朝鮮国連軍が解体しても、朝鮮半島有事に際し米国の関与が担保される仕組みである」
―名護市辺野古の新基地建設が完成して普天間飛行場が返還されると国連軍基地はどうなるか。
「移設は普天間の現有機能維持が基本だから代替施設でも国連軍基地は維持されるだろう。日本にとってみれば国連軍は国内的に正当化しやすく、基地負担も米軍より表面化していない。米軍にとっても国連軍基地をなくすメリットよりもデメリットの方が大きい。よって国連軍基地を削減する理由は考えにくい。ただ、朝鮮半島有事の場合は国連軍基地を通じての支援が求められるリスクはある」
(聞き手 梅田正覚)