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【深掘り】玉城デニー知事「地元尊重を」踏み込む 自衛隊うるま訓練場計画 市議会、市長対応が焦点に 沖縄


【深掘り】玉城デニー知事「地元尊重を」踏み込む 自衛隊うるま訓練場計画 市議会、市長対応が焦点に 沖縄 うるま市石川の住宅地(手前)。その背後、山の麓に位置するのが陸上自衛隊訓練場整備候補地となっているゴルフ場跡地=13日、うるま市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 うるま市石川の自衛隊訓練場整備計画を巡り、石川出身の全7市議が与野党を超えて反対で一致し、石川地区全体への説明会実施を沖縄防衛局へ要請した。石川地区自治会長連絡協議会も同日、玉城デニー知事に反対を伝達した。地元を中心に保革を問わず反対を訴える動きが相次ぐ中、うるま市議会や中村正人市長の対応に注目が集まる。

 「地元の意向を尊重すべきだとしっかり申し入れる」

 自治会長らと面談した玉城知事は、自衛隊に関する従来の発言から踏み込んだ表現で応じ、来県中の木原稔防衛相に伝える考えを示した。

■変化

 知事はこれまで、自衛隊の役割に理解を示す立場から、自衛隊配備が問題となった際も「丁寧な説明を求める」などと述べ、賛否への言及は避けてきた。

 今回は反対する地元の声を「尊重すべき」との言葉を用いた。賛否に触れずとも、知事周辺は「(反対と)ニュアンスは変わらない」と知事の心境を代弁する。背景には、石川地域が保革を超えて一致した状況がある。地元では「自衛隊訓練場設置計画の断念を求める会」準備会が立ち上がり、運動が拡大していく見込みだ。

 準備会には市議会与党会派の新政・公明から眞壁朝弘、糸数昌宗、平良一雄の3氏と同じく与党・津梁の伊波良明氏、無所属の松田久男氏、野党・希望のいぶきの伊波洋氏、国吉亮氏が参加。この7市議連名で防衛局に要請した。

 定数30の市議会で、6人所属の新政・公明は与党第2会派。自民、公明、無所属の議員で構成する。石川出身以外の所属議員を含めて「支持者の意向に寄り添う」とし、会派全員が計画断念を求める住民の意向を尊重する立場をとる。

 市議7氏を介し、地元の旭区自治会は計画反対と石川全体への説明会を求める請願を提出しており、市議会での今後の審査が焦点となる。

 無所属の松田氏は「全会一致で採択したい」と話し、いまだ賛否を示していない市への働きかけも見据える。

■波及

 地元で広がる反対のうねりは、県全体にも波及しつつある。

 自民県連は木原防衛相に「地元に配慮し丁寧な対応」を要請することを決めた。自民県議の一人は「地元の声は大きい。何もしないことはできない」と説明した。

 6月に県議選を控え、問題が長引けば影響は避けられず、県連として対応を迫られた形だ。自民党関係者は反対の広がりに「防衛相も説明ぶりを変えざるを得ないのではないか」と語った。

 一方、防衛省関係者は「省の方から計画を撤回することはできない。反対運動で取り下げた『前例』となれば、他にも波及しかねない」と白紙撤回は否定。「計画を強行して禍根を残すのも問題」と懸念は示しつつも、「運用してみれば、地元に大した問題は生じさせないと理解してもらえるのではないか」と計画実現に期待をにじませた。

 ただ、どれだけ条件を変えても、住宅地のすぐそばに訓練場が造られるという、地元住民の最大の懸念は払拭されない。

 (知念征尚、佐野真慈、金盛文香、明真南斗)