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中国を念頭に「防波堤」 沖縄本島のミサイル配備 南西諸島の司令塔担う 沖縄


中国を念頭に「防波堤」 沖縄本島のミサイル配備 南西諸島の司令塔担う 沖縄
この記事を書いた人 Avatar photo 知念 征尚

 陸上自衛隊勝連分屯地への配備が迫る地対艦ミサイル部隊。沖縄本島では初となるが、県内では宮古島、石垣島、鹿児島県の奄美大島にもすでに配備されている。勝連には南西諸島の4部隊の指揮統制を担う「連隊本部」も置かれることとなり、中国の太平洋側への進出を妨げる「防波堤」の役割を担う南西諸島内各部隊の司令塔として機能していくことになる。

 陸自の12式地対艦ミサイルは射程百数十キロとされる。奄美大島と宮古島の間には射程内に収まらない「空白地帯」が生じており、防衛省・自衛隊内で課題として認識されていた。中国艦艇は沖縄本島と宮古島の間に広がる宮古海峡を通過する動きを繰り返すなど活動を活発化させてきた。

 沖縄本島への部隊配備は、有事に敵の接近を阻止する役割と同時に、同盟国米国と連携して中国艦艇をけん制して勢力圏を東シナ海に封じ込める狙いもあるとみられる。

 配備される勝連分屯地はあくまで部隊が一時的にとどまる場所だ。有事となれば発射機などを駐屯地の外へ機動的に展開することになる。

 一方、防衛省は現在、12式地対艦ミサイルの飛距離を伸ばし、敵基地攻撃能力(反撃能力)を担えるようにした「能力向上型」の配備を2025年度から始める方針。現段階で配備先を明らかにしていないが、従来型を全て置き換えていくことも想定しており、勝連を含む南西諸島の各地対艦ミサイル部隊にも配備される可能性がある。ミサイル部隊の強化は相手にとって脅威が増し、有事において攻撃対象となる可能性が高まることも意味する。

 県軍用地転用促進・基地問題協議会は「米軍基地が集中していることに加え、自衛隊の急激な配備拡張による抑止力の強化がかえって地域の緊張を高め、不測の事態が生じることを懸念している」とし、敵基地攻撃能力のあるミサイルは県内に配備しないよう訴えており、懸念はくすぶり続ける。

(知念征尚)