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出力低下から90秒後には墜落 操縦経験者も「未知の事態」 宮古陸自ヘリ事故 調査結果明らかに


出力低下から90秒後には墜落 操縦経験者も「未知の事態」 宮古陸自ヘリ事故 調査結果明らかに UH60JAヘリコプター(資料写真)(陸自提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 明 真南斗

 昨年4月に宮古島市沖で発生した陸自ヘリ事故について調査結果が明らかになった。取扱書に載っていない「ロールバック」現象が発生したとみられることや、その上で両方のエンジン出力が低下したことを踏まえ、操縦士経験のある防衛省幹部は「(操縦士にとって)未知の事態」と表現した。事故を完全に防ぐ困難さが露呈した。

 昨年4月6日午後3時54分、高度約330メートルで飛行していた陸自ヘリは右側の第2エンジン出力が徐々に低下。ローターの回転数低下を知らせる警報音が鳴った。その後も高度は保たれていたが、37秒後に左側の第1エンジンの出力が低下し、両方のエンジン出力が低下すると機体の高度も下がり続け、最初の出力低下から約90秒後に墜落したとみられる。

 音声データには、機長と副操縦士とみられる2人が機体の高度維持を試みるやりとりが残っていた。一度、左右のエンジンを誤って呼び、操作ミスにつながった可能性も否定できないものの、エンジン出力の低下が始まった後の会話だったため、低下とは無関係だとみる意見も出たという。


 原因を一つに絞り込むことはできなかったが、森下泰臣陸上幕僚長は14日の記者会見で「可能な限り絞り込み、いずれの要因にも対応可能な再発防止策を講じるに至った」と説明した。
 一方、再発防止策は根本的に不具合を防ぐ対策ではなく、点検頻度の向上などで不具合が発生しても事故につながらないようにする対策が主だ。防衛省関係者は「100%起こらないようにするのは難しい。だからこそ、事故につながらないようにその可能性を極限まで減らす」と語った。
 いくつもの予防策を立てるのは事故としては一般的だ。だが今回推定されるように複数の問題が重なって事故につながる可能性は消えない。米軍や自衛隊の施設が狭い島に密集する県内は、事故の危険性が高いことになる。基地負担を減らすという根本的な対応が求められる。 

(明真南斗)