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西山氏からの公電入手を否定、「第三者から」 沖縄返還密約 横路孝弘元議長の口述記録が判明、29日から衆院HP公開


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 衆院が故横路孝弘元議長に生前、インタビューした口述記録の概要が25日、判明した。1972年の沖縄返還に伴う日米密約を毎日新聞で報じた故西山太吉氏が逮捕された事件を巡り、外務省の極秘公電を衆院予算委員会で暴露したいきさつを説明。公電のコピーは、西山氏以外の第三者が「使っていいよ」と横路氏の元に持ち込んだと語った。

 口述記録によると、横路氏は沖縄返還に関する米側負担の日本肩代わり疑惑を71年に報じた毎日新聞報道を受け、西山氏と面会。聞き取った内容を基に国会質問に臨んだ。この際は「西山氏から、記事の根拠は何か聞いていない」と強調した。

 公電を入手した経緯に関し、72年3月に「質問の直前、電話がかかってきて、ぽっと渡された」と証言。相手が誰かは「ノーコメント。私もよく知っている友達です」とした。横路氏はこれまでも、コピーは西山氏から人を介して提供されたと説明している。

 横路氏は同3月27日の予算委で、公電のコピーを手に政府を追及。翌28日にはコピーを公表し、政府は公電の存在を認めた。西山氏は同4月、外務省の女性職員と共に国家公務員法違反容疑で逮捕された。

 横路氏は衆院の聞き取りに「佐藤内閣打倒のいい機会ということで踏み込んだ。ただ、新聞記者が弾圧の対象となるとは誰も考えなかった。(逮捕は)大変残念に思っている」と振り返った。

 衆院は口述記録を今月29日にホームページで公開する予定だ。歴史的な証言を残す「オーラルヒストリー」と呼ばれる調査で、公開は河野洋平元議長に続き2人目。横路氏は民主党政権時の2009~12年に議長を務め、23年2月に82歳で死去した。聞き取りは20~22年に実施。西山氏も23年2月に死去した。


<用語>沖縄返還密約事件

 沖縄返還協定が調印された1971年、毎日新聞記者だった故西山太吉氏が、米軍用地の原状回復補償費400万ドルを日本側が肩代わりするとの外務省の極秘公電のコピーを入手。当時、社会党衆院議員だった故横路孝弘元衆院議長が72年、コピーを基に国会で質問した。西山氏はコピーを渡した外務省の女性事務官と共に国家公務員法違反容疑で逮捕、起訴された。西山氏は一審で無罪とされたが、二審は逆転有罪となり、最高裁で確定した。

(共同通信)