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桜井国俊氏 沖縄大名誉教授 県条例、なし崩しに


桜井国俊氏 沖縄大名誉教授 県条例、なし崩しに 桜井国俊氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄県外からの土砂搬入を規制する県条例に対して、防衛省は土砂を洗浄することで対応することを考えているようだが、トラック1台や2台ではなく、膨大な量の土砂が運ばれる。全てを洗うことは現実的ではなく、不可能だろう。県外から辺野古に土砂を運んだという前例がつくられ、なし崩しにされてしまうのではないか。

 何の外来生物が入ってくるか分からない以上、他の地域から運んで来ること自体にリスクがある。例えば、沖縄ではハブ対策で人為的に連れてきたマングースが問題となっているが、今度はそれが予想できない形で現れる。役人は自分がポストにいる数年間を考えればいいのかもしれないが、沖縄の生態系への影響は長く残る。

 仮に洗浄できたとしても、取り除かれた膨大な汚れが海に流れてしまうことも考えられる。沖縄だけでなく奄美側の環境にとっても悪影響を与えてしまう。

 大浦湾は、日本が真っ先に保全しないといけない生物多様性の豊かな海域だ。海中ドローンで深い海を見れば、見たことのない生き物も見つかる。そこに大量に土砂を投入すること自体が許されない。

 もしも政府が、本気で全ての土砂を徹底的に洗うというなら、べらぼうなコストがかかるだろう。いつ完成するかも分からず、米軍も本音では使いたがっていないような基地建設への出費で血税をどぶに捨てていくことに、県民や国民は怒るべきだ。

 (環境学)