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【記者解説】自治体の「自衛」逆手に米軍、責任回避 PFAS調査拒否 日米合意機能せず 沖縄


【記者解説】自治体の「自衛」逆手に米軍、責任回避 PFAS調査拒否 日米合意機能せず 沖縄
この記事を書いた人 Avatar photo 明 真南斗

 米軍基地周辺で高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が検出されている問題で、県民に供給される段階の水道水では値が低減されていることを理由に立ち入り調査を拒否する米軍の姿勢からは過去の汚染に対する責任を回避したい意図が透ける。自治体が「自衛」として低減に取り組まざるを得なくなっていることを逆手に取った詭弁(きべん)だ。

 県企業局はPFAS濃度の高い中部地域の水源から可能な限り取水しないようにしているが、水源が限られている県内では限界もある。今年2月には渇水を受けて濃度が高い中部水源からも取水を再開した。貯水率の回復に伴って割合を減らすなど工夫を重ねている。

 普天間飛行場周辺の湧水は生活用水や農業用水として使用されてきた。伝統の一つとして文化財にも指定される。宜野湾市内の公園では、子どもたちが遊んでいたため池からPFASが検出されて使用できなくなるなど実害が生じている。水道の水源ではないため対応不要だという米軍の主張は、地元の伝統や暮らしをないがしろにしている。

 2015年に締結された日米地位協定の環境補足協定は4条で立ち入りが認められる場合として(1)「環境に影響を及ぼす事故(すなわち、漏出)が現に発生した場合」(2)基地返還前―の2点を挙げている。他にも基地内立ち入りを定めた日米合意はあるが、いずれも強制力はなく、機能していない。

 一方、補足協定2条では周辺に影響を及ぼす事態に関して情報を相互に提供するために日米が「合同委員会の枠組みを通じて引き続き十分に協力する」と定められている。米軍の非協力的な姿勢は補足協定の趣旨にも反している。

 日本政府が今後取り組むべきは米軍の追認ではなく、補足協定の趣旨を生かして県民の水を守る方策を追求することだ。

(明真南斗)