米環境保護庁(EPA)が有機フッ素化合物(PFAS)のうちPFOAとPFOSの2種類をスーパーファンド法に基づく有害物質に指定した。米本国で規制強化が進む一方で、沖縄の米軍基地周辺では高い値でPFASが検出されているにもかかわらず基地内で調査できていない現状がある。沖縄のPFAS問題に詳しい専門家や市民団体も動向に注視している。
米国内のPFAS規制の動向を追う環境保護団体「エンバイロメンタル・ワーキング・グループ(EWG)」は、今回の指定により、汚染が深刻な米軍基地をEPAによる浄化の優先リストに追加しやすくなるほか、基地閉鎖後に国防総省が民間の開発業者に土地を売却する際、基地で発見されたPFASに関する情報と、浄化の措置を報告しなければならなくなるとして注目している。
在日米軍が環境保全について定める日本環境管理基準(JEGS)は、日米双方の基準のうち厳しい方を採用するとの原則がある。23日の会見で伊藤信太郎環境相は今回の発表に「さまざまな機会を捉えて(EPA)と情報交換をしてまいりたい」と述べたが、JEGSに盛り込むことを米側に求めるかについて踏み込んだ回答はなかった。
PFAS調査のための米軍基地への立ち入りを求めて要請を続ける宜野湾ちゅら水会の町田直美代表は「米軍が目の前にいるのに調査がされないのは歯がゆい。汚染者が負担するという原則を、海外に米軍基地のある地域と連帯して訴えていきたい」と求めた。
県内の環境調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)の河村雅美代表は、飲み水だけでなく過去に使用していた有害物質が負の遺産として残っているという「レガシー汚染」の汚染地という視点でアプローチをする必要性を指摘する。跡地の「支障除去」について定めた跡地利用特措法で適用される土壌対策法や水質汚濁法ではPFAS汚染は想定されていない。
河村代表は「日本全体のPFAS汚染に対しても、米国同様に汚染者の責任の明確化や浄化を進めるため、跡地利用特措法の改正などが必要だが、沖縄は基地の返還跡地の問題も射程に、米国の今回の動きを活用していくことが求められる」と話した。
(慶田城七瀬、嘉数陽)
<用語>米スーパーファンド法
1978年に米国のラブキャナル運河で起きた有害化学物質による汚染事件を機に制定された。汚染の調査や浄化を米国環境保護庁が行い、浄化の費用負担を、有害物質に関与した施設所有者や管理者のほか輸送業者や融資した金融機関までの潜在的責任当事者が負うという責任範囲の広さが特徴。