米軍基地周辺で高濃度で検出される有機フッ素化合物(PFAS)対策の財政支援について、国の消極的な姿勢が際立っている。玉城デニー知事は24日、水道水の取水制限の影響が深刻化することもあり、関係省庁への支援要請に踏み切った。
10月から水道料金を値上げせざるを得ない状況で、自治体によるPFAS対策への各種支援を求めているが、反応は鈍い。財政負担については「担当省庁が定まっておらず、県側との調整も付いていない」(政府関係者)とたらい回しとも言える状況だ。
「想定していない」
「直接、要請されたのは3点で、その中には水道料金の話は入っていなかった」。伊藤信太郎環境相は26日の閣議後会見でこう言葉を濁した。
PFAS対策に対する県への財政支援について記者団から「考慮する余地があるか」と問われ、明言を避けた格好だ。
伊藤氏は、県への支援の取り組みについて、PFASの一種PFOSのばく露低減のための「対策技術の知見の集積を進め、得られた知見を沖縄県をはじめとする自治体に提供する」とした。
県は、伊藤氏に提出した要請書で、PFASについて(1)県や市町村が実施する対策への費用補償(2)米軍基地内への立ち入り調査と対策(3)米軍への適正処理の要求(4)公共用水域、地下水や水道水の基準値の設定(5)土壌調査の費用負担(6)汚染土壌や施設・設備の浄化方法の確立(7)住民対象の健康調査の実施―の7項目を求めている。
環境省によると、伊藤氏が指摘する「3点」とは、このうち(2)、(4)、(6)を指す。同省担当者は「県が求める財政負担は想定していない」と明かす。
すれ違いで複雑に
一方の防衛省も、北谷浄水場で実施している、PFASを吸着する機能がある粒状活性炭の更新にかかる費用の補助を担っているものの、その維持・管理にかかる費用負担には応じていない。
玉城知事から木原稔防衛相への要請に同席した大和太郎地方協力局長は「施設の維持費については管理者が負担をすることが原則だ」との認識を示している。
沖縄振興を所管する自見英子沖縄担当相も、「さまざまな課題について内閣府としても注視する」などとして財政支援を明言しなかった。
防衛、環境両大臣には7項目の実現を求めたのに対し、自見氏への要請書では「関係省庁への働きかけ」を求めていることが答弁の背景にある。
ただ、要請の中身に違いがあるのは、内閣府側と県側の思惑の違いも影響している。
内閣府幹部は「PFAS問題は全国共通の問題で、振興の主旨である『沖縄の特殊事情』とは言えない。県が使途を決める(沖縄振興予算の)一括交付金の枠内で求められれば、考慮の余地がある」と説明した。一方、県関係者は「一括交付金は県全体の事業にかかるものだ。米軍由来が疑われるPFASの対策費用は別途、国が負担すべきだ」との認識を示している。
県と政府のすれ違いが、PFASに起因する問題を複雑化させているとも言えそうだ。
(安里洋輔、沖田有吾)