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辺野古住民に「原告適格」 抗告訴訟、高裁が一審を破棄 「基地被害受けるおそれ」 沖縄


辺野古住民に「原告適格」 抗告訴訟、高裁が一審を破棄 「基地被害受けるおそれ」 沖縄 判決後「原告適格認める」「裁判はこれからだ」の旗を掲げる原告団の東恩納琢磨さん(左)ら=15日午後3時すぎ、福岡高裁那覇支部前(ジャン松元撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 名護市辺野古の新基地建設工事で、沖縄県による埋め立て承認の撤回を取り消した国土交通相の裁決が違法だとして、辺野古周辺に住む市民4人が国に裁決の取り消しを求めた抗告訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は15日、「原告適格がない」として原告の訴えを却下した那覇地裁の判決を破棄した。原告適格を認めた市民の訴えは「適法」とし、審理を一審の那覇地裁に差し戻すとした。

 弁護団によると、辺野古に関する一連の訴訟で、住民側の主張が認められるのは初めて。国側が上告しなければ判決が確定し、辺野古の埋め立てを巡る国交相の裁決について一審で実質的な審理が初めて行われる。

 国交相裁決を所管する国交省の担当部局の担当者は本紙取材に、「判決の内容を詳細に把握できていないためコメントは差し控える」とした。

 三浦裁判長は判決理由で、原告側が、新基地建設に伴って起こり得る航空機の騒音や航空機事故などの「著しい被害を直接的に受けるおそれのある者にあたる」と判示。行政事件訴訟法(行訴法)が定める「法律上の利益を有する者」として原告適格を認めた。

 2022年4月の那覇地裁(福渡裕貴裁判長)の一審判決は、騒音被害を訴える原告が、国の定める騒音コンター(分布図)で「受忍限度を超える」と認められる、うるささ指数(W値)75の区域外に居住していることなどを理由とする国側の主張を認めて訴えを却下。「健康や生活環境に、著しい被害を直接的に受けるおそれがあるとは認められない」として原告に訴訟を起こす適格性がなく、訴えは「いずれも不適法」としていた。

 控訴審判決は、一審判決が認めた国側の主張は「採用の限りでない」として退け、「さらに弁論をする必要がある」と指摘した。


<用語> 原告適格 訴訟を起こし、判決を受けることのできる資格。行政事件訴訟法(行訴法)9条では、行政処分などの取り消し訴訟の原告適格について「法律上の利益を有する者」と規定する。行政訴訟では認められにくく、訴訟の入り口である原告適格の審査で却下されることが多い。2004年の行訴法改正で、直接の権利者以外にも行政処分の影響を受ける時の認定の範囲が拡大された。