名護市辺野古の新基地建設工事を巡り、福岡高裁那覇支部は15日、辺野古周辺住民が騒音などで健康被害を受ける恐れがあるとして、裁判を起こした市民4人が「原告適格がある」と判断した。
これまで、入り口論に終始し、住民の訴えを門前払いする判決が続いたが、実質審理に道を開く判決となり、原告や市民からは「画期的だ」「潮目が変わる」など喜びの声が相次いだ。
司法の堅い扉がようやく開いた。名護市辺野古の新基地建設を巡り、周辺住民が工事の適法性を問うた訴訟の控訴審で、福岡高裁那覇支部は15日、原告4人全員に裁判を起こす資格があると認めた。
辺野古に関する訴訟ではこれまで、具体的な審理に入らず、原告適格を認めない門前払い判決が続いていた。「ここからがスタートだ」。日本復帰から52年の節目の日に言い渡された判決に、原告らは喜びつつ、今後の審理を見据えた。
「原判決を取り消す」。三浦隆志裁判長が主文を読み上げると、傍聴席から「おー」とどよめきが起きた。三浦裁判長は、ざわめく法廷に静粛にするよう呼びかけた後、判決骨子を説明した。笑顔を見せる原告側の弁護団に対し、国側の代理人らは淡々とメモをとった。
言い渡しが終わり、退廷しようとする三浦裁判長らに、原告の金城武政さん(67)は「ありがとうございます」と声を張り上げた。法廷は拍手に包まれ、弁護団や支援者らが「やった」「すごい」と喜び合った。
18歳の時、辺野古の集落内で米兵に母親を殺害された金城さん。これまでの弁論で原告として法廷で意見陳述をし、新基地建設への懸念を語ってきた。控訴審判決について「予想外だった」としつつ「裁判所がわれわれの声を真摯(しんし)に受け止めてくれた。やっと土俵に乗れた。これでようやく中身に入れる」とかみしめるように語った。
判決を聞いて思わず拍手をしたという鷲尾眞由美さん(72)は「辺野古埋め立てを中止にもっていく希望が見えた」と前を向いた。ただ、国が最高裁に上告すれば、原告適格についてもう一度争うことになる。原告団長の東恩納琢磨さん(62)は「これだけ大きな問題を入り口で退けるのはおかしい。国は上告せずに正々堂々と主張してほしい」と望んだ。
(狩俣悠喜、前森智香子)