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沖縄振興 次の仕組み作りを 佐藤学氏(沖国大教授・政治学)<識者の視点・沖縄県議選2024>(2)


沖縄振興 次の仕組み作りを 佐藤学氏(沖国大教授・政治学)<識者の視点・沖縄県議選2024>(2) 佐藤学氏
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―復帰から50年以上続く沖縄振興の評価は。
 「沖縄振興は、米施政権下で遅れた戦後復興と社会資本整備を、国が責任を持って進めるという形で始まった。高率補助方式による公共工事で社会資本が一定改善されたことは間違いない。復帰から30年間は効果があったと考えていいが、1990年代から廃止の議論が出始めた」
 「喫緊の課題である子どもの貧困は、50年以上沖縄振興特別措置法(沖振法)が続いているにもかかわらず解決していない。高率補助の制度の下で公共工事に偏った財政になり、教育福祉など必要な所に金を使えなくなっている。沖縄の自治は手を縛られている」

 ―沖縄振興体制の出口に向けた議論が低調だ。
 「沖振法の仕組み以外の選択肢が、県民に見えていない。多くの人が沖縄振興予算を米軍基地との引き換えで受け取っている予算で、沖縄が特別措置法で得をしていると勘違いしているが、そうではない。沖振法を卒業しても、他県がやっている予算折衝を県もやるだけで、国からの財政補助がなくなるわけではない。これを県民に知らせるべき知事や県議も、沖振法を死守することに必死だ」

 「琉球新報が実施した県議会立候補予定者へのアンケートで、沖振法の在り方について『単純延長』『将来的な廃止』を選んだ人が各9人で、49人が『その他』という結果を見た。この4年間で県議会でも議論が進んでいないと感じた。県民に沖振法廃止の議論が浸透していない中で、選挙を前に廃止を訴えるのはリスクが伴うのだろう。県議選で沖振法の在り方は争点になりづらい」

 ―議会としてどのような議論が必要か。期待することは。
 「少なくとも沖縄から、この10年でどう沖振法から卒業するかを提案するべきだ。リーダーシップを取るべき知事や県議らが、沖振法以外の仕組みを考え、政策を作る必要がある」

 「2032年には酒税軽減措置が完全に廃止され、沖振法は26年度までに見直される。県議会として、今から沖振法廃止後に向けた次の制度作りを議論してほしい。沖振法の仕組みで沖縄は損をしているという認識を、保革問わず持つことが大切だ。この制度で沖縄がどれだけ良くなったか、一方でなぜ子どもの貧困がずっと続いているのかなど、財政点検をする必要がある。有権者には、沖振法廃止後の仕組みを立候補予定者が真剣に考えているか、見極めてほしい」