有料

下水道の「耐震化」全国平均下回る ハード交付金の減額も影響 沖縄


下水道の「耐震化」全国平均下回る ハード交付金の減額も影響 沖縄 下水道(イメージ)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 生活に欠かせないインフラの一つである下水道。地震などの災害に備え、適切な整備が求められるが、ハード交付金の減額なども影響し、県が管理する下水道施設の2022年度末時点での耐震化率は全国平均を下回っている。3月に開かれた国の上下水道地震対策検討委員会では、下水道施設の耐震化が進んでいた地域で地震が発生した際、下水道機能への影響が少なかったことが明らかになるなど、災害対策に注目が集まる。

 県管理の下水道施設のうち、処理場やポンプ場に直結している主要な管路は117・2キロ。そのうち耐震化済みは45・9キロで、耐震化率は39・2%(全国56%)。また、地下深くの下水道管から汚水をくみ上げるポンプ場は19施設で、耐震化率は15・8%(全国38%)。汚水を処理するための処理場は4施設で、耐震化率は38%(全国40%)となっている。

 県内市町村の下水道施設耐震化率は、主要な管路は49・9%、ポンプ場22・9%、処理場では27%。主要な管路とポンプ場では、県管理施設に比べて市町村施設の耐震化率が高い。

 県下水道課によると、1995年の阪神淡路大震災を受け、97年に下水道施設の耐震設計指針が大幅に見直された。そのため、県内で同年以降に設置された施設は、管のパイプ同士のつなぎ目が抜けにくい構造になっているなど、耐震化されているという。

 一方で、97年以前に設置された施設は耐震化が施されていないものが多い。県は、97年以前に設置した施設は、優先度を考慮して耐震化を進めているが、整備から50年以上経過している施設もあることから、耐震化と同時に老朽化対策も進めている。県下水道課の担当者は、ハード交付金が減額している影響が大きいとし「耐震化に限らず、施設整備など事業の先送りが発生している」と話す。

 3月に開かれた国の上下水道地震対策検討委員会では、1月に発生した能登半島地震での下水道被害について報告があった。能登地方の6自治体では、多くの下水道施設で被害が発生したが、同地域の下水処理場およびポンプ場はいずれも耐震化が約70%実施済みであったため、施設機能に影響を及ぼすような致命的な被害は確認されなかった。一方で、被害が大きく復旧が遅れているのは耐震化が未実施の圧送管だったという。

 県の前川智宏土木建築部長は、下水道は地震発生の有無に限らず、県民にとって重要なインフラであるとし「(耐震化整備のために)国に必要額を説明し、予算確保にむけて取り組む」と述べた。

 県では、新・沖縄21世紀ビジョン基本計画に基づき、市町村管理の管路と合わせて年間で2・5キロの耐震化を進めることを目標としている。耐震化と合わせて老朽化対策も進めていく予定。また、市町村に対し、県と連携して耐震化などに取り組むことを求めるとともに、現在活用されている防災・安全交付金に加えて、別の交付金など幅広く検討するよう呼び掛けている。

(與那原采恵、沖田有吾)