大災害や感染症まん延などの非常時、自治体への国の指示権を拡大する改正地方自治法について、自治体トップの63%は肯定的に評価していることが分かった。全国の都道府県知事と市区町村長に共同通信社がアンケートし、22日までの回答を集計した。「評価する」は4%、「どちらかといえば評価する」が59%。法改正は国と地方を「対等・協力」とした地方分権の理念に反するとの批判もあるが、国の指示による迅速対応を重視する意見が優勢だった。乱用しないよう慎重な行使を求める声も目立った。
改正法は26日に施行。コロナ禍で行政が混乱した経験を踏まえ、個別の法律に規定がなくても、非常時は国が自治体への指示権を行使できる。
アンケートは7~8月、1788自治体に行い、93%が答えた。「どちらかといえば」を含め、法改正を評価する理由(複数回答)は「個別法で対応できない事態にも迅速な対応が必要」「非常時に備え国の役割を明確にすべきだ」がいずれも半数超を占めた。
ただ政府はどのような場合に権限を行使するのか具体的な場面を示していない。肯定派の中でも「限定的・抑制的に行使されるべきで、国から一方的であってはならない」(宮城県女川町)、「自治体との事前調整や連携を密にしてほしい」(熊本県天草市)といった要望が目立った。
一方「評価しない」は5%、「どちらかといえば評価しない」は19%だった。理由(複数回答)は「要件があいまいで国の恣意(しい)的な運用につながりかねない」が70%で最多だった。「災害で重要な初期対応と情報の把握、スピーディーな判断は自治体と住民が主役。地方に裁量を委ねるべきだ」(北海道美唄市)、「必要なのは指示ではなく自治体を支援することだ」(東京都多摩市)との意見があった。
12%は「今後の運用次第であり、現時点で制度の評価はできない」(静岡県)などとして「分からない」と回答した。残り1%は、いずれの選択肢も選ばなかった。
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<用語> 国の指示権 必要な事務処理を国が自治体に指示できる権限。災害対策基本法や国民保護法など、それぞれの事案に関係する個別法に基づいて行使するのが原則。選挙など自治体が国に代わって行う「法定受託事務」の違法状態を是正する場合にも行使される。改正地方自治法は「国民の生命等の保護のために特に必要な場合」にも行使できるよう特例を設けた。国と地方の関係を「対等・協力」と定めた地方分権の原則は維持するものの、行使前の自治体との協議や意見聴取は義務付けられておらず、国会審議などでは「自治体への国の不当な介入につながる」との批判が出ていた。
調査の方法=アンケートは7月、全国の47都道府県知事と1741市区町村長に、インターネットを通じて質問票を送付した。主に自治体がオンラインの回答フォームに直接入力する方式を用い、8月までに47知事と1620市区町村長の計1667人から回答を得た。回答した人数を分母としてデータを集計した。