「これからはさまざまな議会からの要求も強くなっていくだろう。しっかり受け止めて真摯(しんし)に対応したい」
県議選で与党の過半数割れが確実となった17日未明、玉城デニー知事は知事公舎で、集まった報道陣に硬い表情のまま答えた。13分間の取材の間、何度も「真摯に」「丁寧に」と繰り返し、議会に対して説明すると口にした。
翁長雄志前知事が2014年に知事選で勝利して以降は与党多数が続いてきたが、10年ぶりの「ねじれ」となり、28議席を獲得した野党・中立は、県議会の常任委員会で全てに委員長を出しても多数を維持することが可能となり、予算などの審議で玉城デニー県政に攻勢を掛けることが予想される。
自民は県が15年に開設したワシントン事務所について、効果を疑問視し、毎年2月定例会の一般会計当初予算案の審議では駐在経費を削除して全額を予備費に充てることなどを盛り込んだ修正動議を提案してきた。これまでは賛成少数で否決されてきたが、自民を中心とした野党・中立が多数を占めることで状況は大きく変化した。玉城知事は17日、ワシントン事務所は着実に成果を挙げているとして従来通り予算案を提案する方針を示したが「理解を得るのは簡単ではない」(県幹部)と懸念の声も上がる。
25年2月定例会では、同年3月に任期満了を迎える照屋義実副知事の後任についても人事案が提出される見通しだが、こちらも難航が予想される。県関係者は「照屋副知事が就任する際にも、議会では野党から撤回を求める声が出ていた。多数を占める野党から同意を得られるような人選となると、難易度が高い」と指摘する。
6月議会で議論を呼ぶと予想されるのは、玉城知事が5月末に発表した中学生の給食費無償化支援事業だ。玉城知事は県議選期間中、街頭で演説した際に「野党が多数を取れば、必ずこの計画をつぶしにかかる」などとして与党候補への支持を呼び掛けた。これに対し自民県連関係者は「知事の言っていることは全く違う。県の責任で完全な無償化を求めていく」と意気込む。
執行部に今後の懸念が渦巻く一方で、首長と議員をともに住民が選挙で選ぶという二元代表制という観点からは、行政と議会の緊張関係は決して悪いことではない。ある県庁OBは、昨年県で報告遅れや手続きミスなどが相次いだことに触れ「県議選は地縁や交友関係で投票する人が多いからと言って、行政への批判から目を背けてはいけない。行政としてやるべきことをきちんとやることが何よりも大事だ」と話し、有権者からの“叱咤激励(しったげきれい)”をしっかりと受け取るように求めた。
(’24県議選取材班)