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【深掘り】米兵の少女暴行事件 沖縄県、政府の姿勢に憤り 県警からも情報なく


【深掘り】米兵の少女暴行事件 沖縄県、政府の姿勢に憤り 県警からも情報なく 米兵の16歳未満の少女への誘拐、不同意性交の事案を受け、被害者の心情への配慮を訴える玉城デニー知事=25日午後、那覇市の県庁
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米兵による少女への性的暴行事件が発生し、那覇地検が起訴していたことが判明した。県は昨年12月の事件発生から半年が経過した25日、報道で覚知した。少女への性的暴行という重大事件への反発が広がる中、3月27日の起訴から約3カ月もの間、県に対して情報提供をしなかった政府の姿勢には憤りが渦巻く。

「県に事前に情報がなかったことは非常に問題だ。著しく不信を招く」

 事件の一報を受けて会見した玉城デニー知事は25日夕、顔をこわばらせた。

3カ月

 外務省は起訴前に、捜査関係機関から情報を得ていた。3月の起訴を受け、外務省は岡野正敬事務次官がエマニュエル駐日米大使に遺憾の意を申し入れたが、県や防衛省には伝達しなかった。

 捜査幹部は「米軍基地政策を所管しているわけではない。(県への通知は)外務省がやることだ」と述べた。

 一方、外務省関係者は「重く受け止めて高いレベルで申し入れた」としつつ、公表については「一義的には捜査機関が捜査や裁判への影響を踏まえて判断するものだ」と説明。互いに責任をなすり付けた。

 結果、起訴直前の3月25日に開かれた県議会米軍基地関係特別委員会でも報告されなかった。

 エマニュエル大使は5月に八重山諸島を初訪問したが、事件に触れることなく日米同盟の強化を主張した。今月16日には今年最大の政治決戦となった県議選が実施された。事件から半年以上が経過して明るみに出たことで「政治的配慮が働いたのではないか」(与党県議)と疑問視する声も上がる。事件を知らされていなかった防衛省関係者は「(選挙への配慮という)うがった見方をされてしまっても仕方がないのでは」とため息をついた。

存在意義

 米軍関連の事件・事故は後を絶たない。日本政府は事件・事故のたびに再発防止を申し入れるが、抽象的な「綱紀粛正」にとどまる。今回、日本政府は「米側も深刻に受け止めている」(林芳正官房長官)と擁護するが、米軍は外出制限など明確な再発防止策を打ち出していない。県民の求める安全が担保されるのかは不透明だ。

 防衛省関係者の一人は「防衛省が進める政策への影響は、ほとんどないのではないか。反発は長く続かない」と楽観視した。

 だが、県議からは与野党を問わず、怒りの声が広がる。自民県議の一人は「詳細が分からないが、事実ならあるまじき行為だ」と怒る。県政与党幹部は「戦後79年がたっても、まだ人権が蹂躙(じゅうりん)される戦時下のような状況が続いている」と批判した。与党内からは「保革を超えて命と人権を守るべきだ」との声も上がる。今後、抗議決議や意見書の可決に向けた調整が始まるとみられる。

 保革を問わず、基地あるが故の事件に向き合い、命や生活を守れるのか。25日に任期が始まった県議会議員は、船出から存在意義を問われる重大局面を迎えている。

(知念征尚、明真南斗、沖田有吾)