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【識者】小手先の方法論 米兵性的暴行事件の情報伝達、運用見直し 前泊博盛氏(沖国大教授)


【識者】小手先の方法論 米兵性的暴行事件の情報伝達、運用見直し 前泊博盛氏(沖国大教授) 前泊博盛氏
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 今回の問題は通報制度そのものではなく、制度の運用、誤用の問題だ。過去に決めた制度すら守られていないのに政府、外務省は情報の取り扱いに制限を設けた上で、県に通知するとした。何が問題か理解していない。屋上屋を架しただけの実効性のない、小手先のその場しのぎの対応だ。

 県警は地方警察として地域の安全、犯罪防止が第一のはずだ。米兵による未成年女子の誘拐・暴行事件という重大事件の発生情報をなぜ県民に知らせず、県知事を飛び越え、外務省のみに報告したのか。「県民の命より政治を優先する行為」と非難されて当然で、県警本部長の責任も問われてしかるべきだ。所管する知事や公安委員会の監督責任も問われる。

 問題のきっかけとなった昨年12月の誘拐・暴行事件は、被害者が声を上げなければ捜査は進まず、親告罪的な状況に今もある。ましてや日本には「襲われた側が悪い」と非難する人も多く、声が上げられない被害者も多く、余罪や事件の潜在化も指摘されてきた。

 国が今回示した情報を伝える枠組みでは、抜本的な被害防止や犯罪抑止、県民への警戒態勢の周知などには程遠い対応で、とても県民が納得する内容ではない。逆に傍観者的で当事者意識の欠落した対応と非難されるだろう。

 (安全保障論)