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【深掘り】防衛局強行、サンゴ損傷のトラブル発覚も 辺野古くい打ち試験着手 沖縄県の要請無視(地図あり)


【深掘り】防衛局強行、サンゴ損傷のトラブル発覚も 辺野古くい打ち試験着手 沖縄県の要請無視(地図あり) クレーンで吊り上げられ、大浦湾の海中に降ろされるくい=3日午前11時9分、名護市瀬嵩(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 辺野古新基地建設を巡り、沖縄防衛局は8日、くい打ち工事の試験に着手した。県は試験であっても「通常工事の着手とみなす」として事前協議が調うまでの間は着手しないよう求めたが、防衛局は強行した。準備段階では移植予定だったサンゴを傷付けるトラブルが起きていたことも明らかになり、県関係者は「事前協議をしっかりやるべきだった」と、工事に前のめりな国の姿勢を疑問視する。 

 サンゴが損傷した背景には、サンゴの移植と護岸工事を並行して進めるという防衛局の方針がある。防衛局は辺野古の工事を開始した当初、護岸などの工事に先立ち、予定地一帯のサンゴをまとめて移植することを想定していた。だが、県から移植許可を得るのに難航し、工事を急ぐために方針を転換した。

 昨年10月に開かれた環境監視等委員会で防衛局は、サンゴの移植前にA護岸を含む一部護岸の工事に着手する考えを明らかにした。

 水の濁りや水温、塩分をシミュレーションした結果、サンゴの移植前に工事を行っても「サンゴ類の生息環境は維持される」と報告。サンゴ移植前の護岸工事着手を既定路線として進めてきた。

 結果として、環境保全対策として移植が計画されているサンゴを自ら傷付けたこととなり、県幹部は「こんな話があるのか」と疑問視した。別の県関係者は「工事の進め方に問題があったのではないか」と指摘した。

 防衛省は、損傷が「軽微」と強調し、「再発防止策」を取ったとしてくい打ち作業を再開。護岸工事とサンゴ移植を並行して進める手法を見直すそぶりは見せていない。今後、大浦湾側の工事が本格化すれば損傷などのリスクはさらに増す恐れがある。

 サンゴの生物学を専門とする大久保奈弥東京経済大教授は「損傷が死亡に直結することは考えにくいが、繁殖に影響して生まれる子どもの数が減るのは確実だ。傷が付くと、暑さや病気、工事による濁りにも弱くなるなど複合的な影響を受けやすくなる」と指摘する。

 オーストラリアのサンゴ礁では記録的な暑さで大規模な白化現象が起きている。大久保氏は日本でも例年以上に高水温となって大規模な白化が予想されるとし「このタイミングでの移植は乱暴だ。実行に移すべきではない」と語った。 

(知念征尚、明真南斗)